米・イスラエル空爆でイランの世界遺産「ゴレスタン宮殿」に被害。湾岸のアート施設にも影響
イランの首都テヘランの主要部に位置するユネスコの世界遺産、ゴレスタン宮殿が、アメリカとイスラエルによる空爆の衝撃で被害を受けたと報じられた。イランによる報復では湾岸諸国のアート関連施設にも影響が出るなど、中東地域での紛争拡大への懸念が増している。

イランの世界遺産、ゴレスタン宮殿がアメリカとイスラエルによる攻撃の影響で被害を受けた。
レザ・サレヒ・アミリ文化遺産相が3月2日に公表したところによると、首都テヘラン中心部の政府系庁舎付近への空爆による爆風や破片で、宮殿の窓や扉、鏡などが損傷。同文化相は「イランの文化的・国民的アイデンティティに対する攻撃」であるとして、ユネスコに正式な報告書を提出すると述べている。
16世紀にサファヴィー朝の要塞として建設が始まったゴレスタン宮殿(別名「バラ園の宮殿」)は、18〜19世紀にカジャール朝の王宮として整備・増改築された。
2013年にユネスコの世界遺産に登録された豪華絢爛な建物は、タイルやモザイクによる手の込んだ装飾から美しい池のある庭園に至るまで、伝統的なペルシャの工芸技術や建築様式と西洋的な要素を融合させた点が高く評価された。同宮殿は1930年に定められたイランの国定遺産保護法で国定記念物にも指定されており、有事には特別な保護が与えられることになっている。
現地時間の2月28日に始まったアメリカとイスラエルによる攻撃では、イランの最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイ師と複数の高官が殺害され、ペルシャ湾岸から南西アジア地域における緊張が急激に高まった。イランは報復として、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、カタール、サウジアラビアにあるアメリカとイスラエルの軍事基地などを攻撃。歴史的に不安定な地域にある石油産出国の間で近年保たれてきた秩序が揺らいでいる。
影響は湾岸地域の文化施設にも
報復攻撃を迎撃した破片は、UAEの首都アブダビの沖合にあるサディヤット島にも落下したとされる。この島はUAEの誇る文化地区で、ルーブル・アブダビや開館準備中のグッゲンハイム・アブダビが立地している。フランスのアート紙、ル・コティディアン・ドゥ・ラールによれば、ジャン・ヌーヴェル設計のルーブル・アブダビには攻撃時に避難所として機能する耐火ギャラリーがあるものの、地下シェルターはないという。
UAEには美術館や博物館、ギャラリー、アートフェアによる活気あるアートのエコシステムが存在し、海外からも数多くの来場者が訪れる。しかし今週初め、ドバイで主要なギャラリーが集まるアルサーカル・アベニューが一時閉鎖されたほか、そこに拠点を置くローリー・シャビビ、ザ・サード・ライン、カーボン12、グリーン・アート・ギャラリーが無期限の休業をソーシャルメディアで発表。ペロタン・ドバイもこれに続いた。
カタールでもイスラム美術館や国立博物館などが閉鎖され、再開の見通しは立っていない。首都ドーハのマトハフ・アラブ近代美術館は、「来館者とスタッフが安全で無事であることが最優先事項です」とインスタグラムに投稿している。
なお、US版ARTnewsはテヘランのギャラリーにもコメントを求めたが、連絡は取れなかった。
3月2日にはさらに、レバノンの親イラン武装組織ヒズボラが報復参戦し、イスラエル・ハイファ近郊の軍事基地をロケット弾とドローンで攻撃。これに応戦したイスラエルは、レバノンの首都ベイルートや同国南部を空爆した。現地報道によると、イスラエル軍の攻撃で少なくとも30人が死亡し、150人が負傷している。
この状況を受け、ベイルートのスルソーク博物館は無期限の閉館を発表した。同館は歴史ある邸宅を利用して現代アートの展示を行い、エテル・アドナン、サロウア・ラウダ・シュケールらの主要作品を所蔵している。(翻訳:石井佳子)
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