トランプ一族の暗号資産事業を提訴した中国人富豪コレクター、「資産凍結は不当」と主張
中国出身で、アートコレクターとしても有名な暗号資産界の富豪、ジャスティン・サンが、トランプ大統領一族の暗号資産事業を提訴した。NBCニュースなどの報道によると、サンは自身の保有するトークンを同社が違法に凍結したと主張している。

香港を拠点とし、2017年にブロックチェーンプラットフォームのトロン(TRON)を設立したサンは、アートコレクターとしても知られる億万長者だ。最近では、トランプ大統領の一族が設立した暗号資産事業、ワールド・リバティ・ファイナンシャル社(以下、WLF社)へ巨額の投資を行っている。そのサンが、同社を提訴したことが明らかになった。
サンは2025年1月の時点で、同社のWLFIトークンに累計4500万ドル(最近の為替レートで約71億6000万円、以下同)を投じていた。ブルームバーグの報道によると、2024年にWLF社のトークンを購入して最大の所有者となったときには、トランプ一族に少なくとも1500万ドル(約23億9000万円)が支払われたという。
一方、サン自身も2024年に米国証券取引委員会(SEC)から提訴されている。アートネット・ニュースの記事によると、理由は「サンが市場操作と未登録証券の販売に関与したこと、およびリンジー・ローハンやジェイク・ポールといった有名人に対し、報酬を開示せずに自身の資産を宣伝させるよう画策したこと」だが、サンはこれを否認した。
NBCの報道によると、今回カリフォルニア州の連邦地方裁判所に提出された訴状では、WLF社がサンによる売却を妨げる仕組みを密かに導入し、サンのデジタルウォレット内にある保有分のトークンを「バーン(焼却)」する、つまり永久に削除すると脅したと主張されている。
また、同訴状によるとサンは4500万ドル相当のWLFIトークン(約30億枚)を購入してWLF社の顧問に任命された後、さらに10億枚のトークンを付与されたという。NBCの記事では、40億枚のトークンの価値は約3億2000万ドル(約509億円)に上ると説明されている。
WLF社の最高経営責任者(CEO)で共同創業者でもあるザック・ウィトコフは4月22日、Xへの投稿でサンの法的主張は「まったく根拠がない」と切り捨て、「WLFは訴えを速やかに棄却させることを考えている。彼は、我われが自社とユーザーを守る措置を講じざるを得ないような不適切な行為を行った」と付け加えた。
トランプ大統領の息子で同社の共同創設者の1人であるエリック・トランプも、サンが現代アートのコレクターであることを念頭に、それを揶揄するようなコメントをXに投稿。「この訴訟よりもばかげているのは、壁にダクトテープで貼り付けたバナナに600万ドルを費やすことくらいだ」と書いている。
これはサンが2024年11月に、オークションでマウリツィオ・カテランの作品《コメディアン》(2019)を624万ドル(約9億9000万円)で落札したことに言及したものだ。当時サンは報道陣の前でそのバナナを食べてみせ、話題を振りまいた。
最近のサンは、これ以外にも複数の訴訟でニュースになっている。たとえば、2025年8月にブルームバーグ・ニュースを提訴し、同社の「ビリオネア・インデックス」に自身を掲載する際、財務状況に関する情報を公表しないよう求めた。
また、2025年2月には自身が所有するアルベルト・ジャコメッティの彫刻作品《Le Nez(鼻)》が不当に売却されたとして、ドリームワークスの共同創業者で著名コレクターのデヴィッド・ゲフィンを提訴した。サンはこの彫刻をニューヨークのサザビーズで7840万ドル(約125億円)で落札したが、偽造署名や架空の弁護士などの巧妙な手口を用いた悪質な美術アドバイザーが、自分の知らないうちにそれを売り払ったと主張。ゲフィン側はこれに反訴している。(翻訳:石井佳子)
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