韓国汚職事件裁判、美術品の真贋が争点に──元大統領夫人への贈賄で逆転有罪判決

韓国の元大統領夫人に李禹煥の絵画を贈り、政治的影響力の行使を図ったとされる元検事が控訴審で逆転有罪判決を受けた。一審での無罪が覆えるまでの審理には、1500万円相当の李禹煥作品をめぐる真贋論争も含まれていた。

特別検察官の審問のためソウルの中央地裁に出廷した金建希(キム・ゴンヒ)元大統領夫人(2025年8月12日撮影)。Photo: Jung Yeon-Je - Pool/Getty Images

ソウル高等裁判所は5月8日、元上級検事の金相珉(キム・サンミン)被告に対し、韓国における汚職防止法違反での有罪判決を下した。検察側は、同被告が2024年の総選挙を前に、政治的な口利き目的で李禹煥の絵画作品をキム・ゴンヒ元大統領夫人に渡したとする請託禁止法違反を主張していたが、今年2月の判決では証拠不十分で無罪とされていた。今回はそれが覆された形だ

朝鮮日報(英語版)によると、キム被告は保守政党「国民の力」からの公認獲得を後押ししてもらうよう働きかける際、1億4000万ウォン(約1500万円)相当の李禹煥「点より」シリーズの作品《From Dots(No. 800298)》を渡したとされる。控訴裁判所は、贈賄について懲役2年(執行猶予3年)の判決を下したほか、別の政治資金法違反でも懲役1年(執行猶予付き)の判決を言い渡している。

この件の審理では、元大統領夫人に渡った李禹煥作品が本物かどうかという点も注目された。報道によると、キム被告側の弁護団は、李禹煥の作品は実際には100万ウォン(約11万円)にもならない偽物だと主張したという。この主張が認められれば、不正勧誘及び贈収賄防止法に該当する高価な物品の贈与という検察側の主張を崩すことになっただろう。しかし控訴裁判所は、法廷で実際にその作品を提示し、専門家の意見も聴取した上で被告側の主張を退け、当該作品は真作で1億4000万ウォンは適正な評価額であると結論付けた。

控訴審では、一審で無罪判決の一因となった美術商の証言も再び審理されている。一審では、証言の一部が途中で変わったことを理由に、信ぴょう性に欠けるとして却下された。一方、控訴審では、元大統領夫人が「その絵を受け取り、喜んでいた」とキム被告が述べたのを聞いたとする主張を含め、美術商の証言は全体として信頼できるものとされている。

ソウル高裁はキム被告に対する判決で異例の厳しさを示し、長年検事を務めてきた者が自身の政治活動の準備に際して元大統領夫人に高価な美術品を贈った行為は、「国民の信頼を著しく損なった」と指摘した。裁判ではまた、選挙運動の準備期間中、車両のリースや保険料の支払いに関連して、被告が約4200万ウォン(約450万円)の政治資金を不正に受け取ったとする件についても事実であると認定している。

判決後、キム・サンミンは記者団に対し、裁判所の決定は尊重するが「非常に残念に思う」と述べ、上訴の可能性について弁護団と協議する意向を示した。(翻訳:石井佳子)

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