ターナー自画像は本人作ではない? 専門家が「ほかの作品に類例がない」と指摘

J.M.W.ターナーの自画像として知られ、英20ポンド紙幣にも採用されている肖像画に、本人作ではない可能性が浮上した。本物の作者は誰なのか。

J.M.W.ターナーの自画像として知られる作品に、別の画家が描いた可能性が浮上している。Photo: Art Media/Print Collector/Getty Images
J.M.W.ターナーの自画像として知られる作品に、別の画家が描いた可能性が浮上している。Photo: Art Media/Print Collector/Getty Images

J.M.W.ターナーの自画像として知られ、イギリスの20ポンド紙幣にも採用されている肖像画が、実際には別の画家が手がけた可能性があるという。ターナーに関する著作を多数執筆してきた美術史家ジェームズ・ハミルトンは、ガーディアン紙の取材に対し、描かれている人物はターナー本人だが、作者は同時代に活動した画家ジョン・オピー(John Opie)ではないかとの見方を示した

ハミルトンは、自身の著書『Turner—A Life』(1997)の表紙に本作を使用した際、この肖像画に似た作品はターナーの作品群に見当たらないと感じたという。その後、ターナーの肖像画を長年研究し、この作品がターナーの没後、遺贈作品の整理過程で誤って本人作とされた可能性があると結論づけた。ガーディアン紙の取材に対して、ハミルトンは次のように説明している。

「ターナーの親族は遺言の無効を訴えましたが、最終的には親族が遺産を、国が絵画を引き継ぐという判決を下しましています。このとき国に渡ったのは、ターナー自身が遺贈を望んだ作品だけでなく、アトリエに残されていた本人作と見なされたすべての作品でした。当時、クイーン・アン・ストリートにあったターナーの自宅には、多くの作品が雑然と掛けられていたのです」

1799年頃という制作年を踏まえると、この作品はターナーが24歳前後のときに描かれたことになる。しかしハミルトンは、若き日のターナー自身が描いた作品というより、14歳年上で肖像画の名手として知られたオピーの作風に近いと見ている。オピーは、この肖像画にも見られるような、「暗闇から劇的に浮かび上がる光」の中に人物を描き出す手法を好んで用いていた。

ジョン・オピー《自画像》(制作年不詳) Photo: Wikimedia Commons
ジョン・オピー《自画像》(制作年不詳) Photo: Wikimedia Commons

一方で、この肖像画の帰属がすぐに変更される可能性は低いと、ターナー協会の会長を務めるピーター・ヴァン・デル・メルウェはガーディアン紙に語っている。背景には、テートロンドン・ナショナル・ギャラリーに分割遺贈されたターナー作品群をめぐる法的な制約があるという。

「テートとナショナル・ギャラリーに分割遺贈された作品群には、ターナー本人の作品だけで構成されるべきだという法的な制約があります。もし万が一、ほかの画家の作品だと決定的に証明された場合、少なくとも理論上は、返還をめぐる問題に発展する可能性があります」

ハミルトンの研究結果は、ターナー協会が発行する『Turner Society News』に掲載された。ハミルトンは現在、テートに対し、作者表記をターナーからオピーへ変更するよう求めている。これに対して同館は、ハミルトンの研究内容を今後検証する予定だと、ガーディアン紙に回答している。(翻訳:編集部)

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