英ポンド紙幣、50年ぶりにデザイン刷新──投票で6割が「自然」を支持、野生生物に決定

イングランド銀行(BOE)は3月11日、次期ポンド紙幣の図柄変更の方針を明らかにした。市民投票の結果、1970年以来続いてきた歴史的人物中心のデザインは見直され、イギリスの野生生物をモチーフとする新図柄が採用される。

J. M. W. ターナーが描かれた、現在の20ポンド紙幣。Photo: Dinendra Haria/Anadolu Agency via Getty Images

イングランド銀行(BOE)は3月11日、次期ポンド紙幣の図柄を歴史的人物からイギリスの野生生物へと変更する方針を発表した

これは、2025年7月にBOEが実施した一般市民を対象とした投票結果を受けて決定されたものだ。次期紙幣のテーマについて、「イギリスを象徴すること」「国民の共感を得られること」「分断を生まないこと」「長く存続しうること」などの基準を満たすものとして、「著名な歴史的人物」「自然」「建築とランドマーク」「芸術・文化・スポーツ」「イノベーション」「重要な出来事」の6つが提示され、回答者は複数回答が可能な形式で投票した。また、独自のアイデアを提案することもできた

BOEには4万4000件以上の回答が寄せられた。その結果、回答者の60パーセントが「自然」を支持し、56パーセントが「建築とランドマーク」、38パーセントが「著名な歴史的人物」、30パーセントが「芸術・文化・スポーツ」を選択した。さらに、自由回答ではイギリスに生息する野生生物を挙げる声が多く寄せられたため、「自然」のテーマの中でも野生生物に照準が当てられた。

野生生物は紙幣の識別にも優れている

今回の結果について、BOEのチーフ・キャッシャー(紙幣発行責任者)であるヴィクトリア・クリーランドは声明で次のように述べている。

「非常に多くの市民が参加してくれたことを嬉しく思っています。この反応は、紙幣が今なお人々にとって重要であることを示しています。新しい紙幣シリーズを導入する主な目的は偽造防止能力を高めることですが、イギリスのさまざまな側面を称える機会でもあります。自然というテーマは紙幣の識別という観点からも優れており、同時にイギリスの豊かで多様な野生生物を人々に紹介することができます」

1694年の創設以来紙幣を発行してきたBOEは、1970年以降の50年以上にわたり歴史的人物を図柄として採用してきた。今回刷新されるのは、現行の全4種のポンド紙幣(Gシリーズ)だ。2016年から2021年にかけて段階的に発行された同シリーズは、5ポンドに元首相ウィンストン・チャーチル、10ポンドに作家ジェーン・オースティン、20ポンドに画家J. M. W. ターナー、50ポンドに数学者アラン・チューリングの肖像が描かれている。ターナーは1851年に死去した際、自身の完成作品約100点に加え、未完成作品や水彩画、素描など数百点を英国国家に遺贈した。また彼の名は、テート美術館が毎年現代美術家に授与するターナー賞の名称にも用いられており、現在もイギリス国民に広く親しまれている。

BOE発行の紙幣で野生生物がテーマとして採用されるのは今回が初めてとなる。各紙幣の表面には引き続きイギリス君主(現在はチャールズ3世)の肖像が描かれるほか、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドという4つの構成国を表すデザイン要素も盛り込まれる予定だ。

英国の「野生生物の専門家」6人が集結

紙幣に描かれる野生生物を選定するためBOEは、野生生物番組で知られるカメラマンのゴードン・ブキャナン、同じく野生生物番組の司会者であるミランダ・クレストヴニコフ、ナディーム・ペレーラ、カーディフ大学のスティーブ・オーメロッド教授、ノッティンガム・トレント大学のドーン・スコット教授、そして非営利団体アルスター・ワイルドライフの上級保全担当者ケイティ・ベルの6人からなる専門家パネルを設置した。彼らが候補となる野生生物のリストを作成し、今年の夏に第2回の一般投票が行われる予定だ。この投票では、一般市民が新たな野生生物を提案することもできる。

BOEは新紙幣の発行時期については明言しておらず、「紙幣は構造が複雑であるため、高品質で耐久性があり、かつ利用しやすいものにするためには、設計、試験、印刷にわたる詳細な複数年の工程が必要」として、「数年後」とのみ述べている。Gシリーズ発行時には、紙幣の素材が従来の綿紙からポリマー素材へと変更された。BOEは、新紙幣には「最新の偽造防止技術」が組み込まれると説明する。

選考委員のペレーラは声明で次のように語っている。

「イギリスの野生生物は私たちの文化と切り離された存在ではありません。サッカークラブの紋章、民間伝承、海岸線、そして私たちの子ども時代の記憶の中にも存在しています。そのような存在が紙幣という象徴的なものに描かれることは遅すぎたほどであり、同時に非常に意義深いことでもあります」

BBCの子ども向けチャンネルCBBCでは、一般投票に先立って「紙幣に描かれてほしいイギリスの野生生物」の投票を実施している。3月17日現在では、1位がハリネズミ、2位がキツネ、3位がヨーロッパコマドリ(ロビン)だ。(翻訳:編集部)

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