ペース、ブランクーシ遺産管理団体のグローバル代表に──市場高騰の陰で死後鋳造をめぐる論争も

ペース・ギャラリーコンスタンティン・ブランクーシ遺産管理団体のグローバル代表に就任した。ブランクーシについては、生前に製作された《Danaïde》(1913年)がクリスティーズオークションで1億760万ドル(約171億円)で高額落札されたばかり。

A screenshot from Christie's video starring Nicole Kidman and featuring Constantin Brâncuși's sculpture Danaïde, 1913. Courtesy Christie's
ブランクーシ《Danaïde》(1913年)を紹介するクリスティーズ制作の動画に出演したニコール・キッドマン。Photo: Courtesy Christie's

S・I・ニューハウスの旧蔵品であるコンスタンティン・ブランクーシ《Danaïde》(1913年)がクリスティーズオークションで1億760万ドル(最新の為替レートで約171億円、手数料込み)で落札される数時間前、世界最大級のギャラリーのひとつであるペース・ギャラリーは、ブランクーシ遺産管理団体のグローバル・レプレゼンテーションを引き受けたと発表した。

ポンピドゥー・センターが企画し、2024年にパリで開幕したルーマニア出身のモダニズム作家の回顧展は、今も世界巡回を続けている。現在は、ベルリンの新ナショナルギャラリーで開催中で、年内にはニューヨーク近代美術館へ巡回する予定だ。

ヨーロッパ近代美術を代表する作家のひとりとして広く愛されているブランクーシの作品は、簡潔さにおいて際立っている。かれは大理石の弧によって鳥を、ブロンズによって眠る頭部を、石膏の塊から接吻する男女を、そして巨大なオーク材から柱を形づくった。このようなミニマルな語彙を用いることで、ブランクーシは身近な形態を極限まで削ぎ落とし、古代美術の優雅さを喚起しようとしたのだ。

1957年に作家は死去したが、その後も遺産管理団体が彫刻の鋳造を行ってきたことに対しては、芸術的意図やオーサーシップをめぐる疑問が投げかけられてきた。

たとえば2014年には、当時ブランクーシの遺産を管理していたカスミン・ギャラリーが、石膏原型から死後に制作された5点のブロンズ鋳造作品を展示している。この展示に際し、ウォール・ストリート・ジャーナルはコレクターのアッシャー・エデルマンの発言を引用し、「ブランクーシに死後エディションなどというものは存在しない。あるのはレプリカだけであり、これらはまさにそれだ」と報じた。エデルマンはその後、同作家をめぐる奇妙な訴訟──彼のアートファイナンス会社アルテムスに預けられていた彫刻が破損したとされる件が争点となった──の被告ともなった。エデルマンは、これを「ばかげている」と一蹴したが、2020年に死去したギャラリー代表(現在は閉廊)のポール・カスミンは、「他人の倫理を自分が決めることはできない」と述べ、ブランクーシの遺産は「ビジネスとして開かれている」と語っていた。

このカスミンの展覧会をキュレーションしたのはジェローム・ヌートルで、彼は現在、ロンドンで年内に開幕予定のペースによるブランクーシ展の準備を進めている。ペースの広報担当者はUS版ARTnewsに対し、この展覧会には美術館からの貸出作品とセカンダリー市場で販売可能な作品が含まれると述べたが、死後鋳造作品が含まれるかどうかについてはコメントを避けた。なお、アートネット・ニュースのカティア・カザキナによれば、遺産管理団体は現在、販売予定のオリジナル彫刻を保有していないという。

ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によれば、こうした鋳造作品は「生前制作の彫刻の約3分の1の価格で取引される可能性がある」とされる。このことが、《Danaïde》が高額落札された理由の一端とも言えるのかもしれない。なぜなら、本作はロット説明によると1913年頃、すなわち作家の生前に鋳造されたものだからだ。

ペースのCEOであるマーク・グリムシャーは声明で、「ブランクーシという卓越したアーティストの遺産を扱い、世界中の観客と共有できることを光栄に思います」と述べ、こう続けた。

「ブランクーシの近代彫刻の父としての貢献は計り知れない。アレクサンダー・カルダーパブロ・ピカソと並び、彼は三次元芸術の未来を形づくったのです」

また、遺産管理団体の所有者であるテオドール・ニコルは、「進歩的で時代を超越したブランクーシの彫刻を世界中の観客に再提示し、その遺産を未来へと導いていくため、ともに取り組めることを楽しみにしています」とコメントしている。(翻訳:編集部)

from ARTnews

あわせて読みたい