アンセル・アダムス作品の「AI改変」に遺産管理団体が抗議──制作者は「パブリックドメイン」と主張

アンセル・アダムス(1902-1984)の代表作をもとに制作されたAI生成作品が、4月に開催されたAIPADフォトグラフィー・ショーに出品され、議論を呼んでいる。アダムスの遺産管理トラストは、「アーティストの権利と人間の尊厳に関わる問題」として、出品したダンジガー・ギャラリーへの抗議声明を発表した。

AIPADフォトグラフィー・ショーに出品された、アンセル・アダムス《Moonrise, Hernandez, New Mexico》(1941)をAI改変した作品。Photo: Courtesy Danziger Gallery

アンセル・アダムス遺産管理トラストは5月23日、2026年4月に開催された国際写真アートフェア、AIPADフォトグラフィー・ショーでAI加工されたアンセル・アダムスの作品が出品されたとして、出品元であるニューヨークのダンジガー・ギャラリーに対して強い抗議の声明を発表した。

代表作をAIでカラー化

問題となったのは、アダムスの代表作《Moonrise, Hernandez, New Mexico(月の出、ヘルナンデス、ニューメキシコ州)》(1941)をもとにしたAI生成作品だ。この作品は現在もダンジガー・ギャラリーのウェブサイトに掲載されており、「A.I. GENERATED」という見出しとともに、「Make a realistic color version of Ansel Adams’ iconic “Moonrise Over Hernandez” (アンセル・アダムスの代表作《ヘルナンデスの月の出》のリアルなカラー版を作成せよ)」という生成プロンプトが記されている。

作品はニューヨークの著名なマスタープリンター、エステバン・マウチによるプリントで、3サイズ・各10点限定のエディションとして制作された。これらは4月22日から26日にかけて開催された、国際写真アート・ディーラー協会(AIPAD)主催の同ショーに出品された。ダンジガー・ギャラリーのブースには、セイドゥ・ケイタ(Seydou Keïta)、ホーダ・アフシャール(Hoda Afshar)、マシュー・ポーター(Matthew Porter)らの作品も並んでいた。

「承認も、黙認もしていない」

トラスト側は声明で、同作品の展示・販売について「承認も、支持も、同意も、黙認もしていない」と明言。「アンセルの名声、評判、そして最も象徴的なイメージを利用しながら、その創作に責任を持つ人間のアーティストを明示していない」と批判した。さらに、ギャラリーから事前の連絡は一切なく、問題を知った後に作品の撤去を求めたものの、応じなかったとしている。

アンセル・アダムス《Moonrise, Hernandez, New Mexico》(1941)Photo: Wikimedia commons

トラストはインスタグラムへの投稿で、次のようにも述べている。

「アンセルは、表現と技術の可能性を広げ続けた革新者でした。コンピュータが写真を変革する可能性についても、先見性をもって強い関心を示していました。トラストの懸念は、AIそのものや抽象的な意味での創造的実験に向けられているのではありません。これは本質的に、アーティストの権利、著作者人格権、そして人間の尊厳への敬意に関わる問題なのです」

1989年設立のダンジガー・ギャラリーは、US版ARTnewsの取材にはコメントを控えた。しかし5月25日、創設者ジェームズ・ダンジガーはギャラリーのウェブサイトで声明を発表し、このAI生成画像の制作者が自身であることを認めた。

ギャラリーは「パブリックドメイン」を主張

ダンジガーは、《Moonrise, Hernandez, New Mexico》がパブリックドメイン(著作権の保護期間が満了した状態)にあることを根拠に、自身には制作する権利があると主張。「作品とアーティストに深い敬意を持って制作した」と説明している。

また、フェアでの反応は「概ね好意的だった」とし、否定的な意見の多くは「AIそのものに向けられたものだった」と述べた。さらに、アダムスの写真はあくまで「出発点」であり、その後、数カ月にわたる人的介入や編集、補正、精緻化を経て、「変容的な作品」に仕上げたと主張している。

ダンジガーは声明でさらに次のように述べた。

「当該画像はパブリックドメインにあるため、私は新たな変容的作品を制作する完全な権利を有しています。制作の動機は、この象徴的作品への愛着と、AIを創造性のツールとして活用する可能性への関心にありました。そして何より、アンセル・アダムスがアメリカの国道84号線を走行中、車を止め、8×10判のビューカメラを急いで構えた瞬間に見た光景──沈みゆく太陽に照らされたアドビ教会と墓地の十字架、その上に雲間から浮かび上がる月──を再現したいという思いからでした」

声明の末尾では、トラスト側が用いた「アンセル・アダムスは、表現と技術の可能性を絶えず拡張した革新者だった」という言葉を引用し、今回の改変をアダムス本人も受け入れたであろうことを示唆した。

写真界の重鎮も批判

トラストのインスタグラム投稿のコメント欄には、写真界の著名人からも批判が寄せられた。

長年ホワイトハウスを撮影してきた写真家ピート・スーザは(Pete Souza)、ダンジガーがこの作品を販売しようとした行為について、「道義的に誤っており、全ての写真家の権利を危うくする」と批判。また、アダムスと親交があったというピュリツァー賞受賞フォトジャーナリスト、デイヴィッド・ヒューム・ケナーリー(David Hume Kennerly)も、「アンセル本人なら、この盗用を嫌悪したはずだ」と述べている。

トラストがAI生成画像をめぐって問題提起を行うのは、今回が初めてではない。2024年には、アドビ運営のストックフォトサービス「Adobe Stock」に、「Ansel Adams-Style Photography - AI-Generated」と題したAI生成画像が掲載されていたことを公式に批判している

当時のAdobe Stock利用規約では、「他のアーティスト名を含むプロンプト」や、「特定アーティストの作風を意図的に模倣するプロンプト」を用いて生成したAI画像のアップロードを禁止していた。トラストが問題を公表した後、アドビは該当コンテンツを削除したと発表している。(翻訳:編集部)

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