ヒューストンの美術館で黒人作家の自画像が損傷。館長は「人種差別的動機」と非難

テキサス州ヒューストンのヒューストン・アフリカ系アメリカ人文化博物館で、黒人作家クラレンス・ヘイワードの自画像が来館者によって損傷を受ける事件が発生した。同館の館長は「人種差別的な動機に基づくもの」と非難した。

クラレンス・ヘイワード《Man in the Garden》(2025) Photo: Courtesy Houston Museum of African American Culture
クラレンス・ヘイワード《Man in the Garden》(2025) Photo: Courtesy Houston Museum of African American Culture

5月21日、ヒューストン・アフリカ系アメリカ人文化博物館(HMAAC)で、クラレンス・ヘイワード(Clarence Heyward)の自画像が来館者によって損傷を受ける事件が発生した。ノースカロライナ州ローリーを拠点とするヘイワードの作品は、同館で6月6日まで開催されていた個展「Eden」で展示されていた。

地元紙ヒューストン・クロニクルによれば、館内を歩き回る2人の来館者が確認された後、ヘイワードの作品のキャンバスには、刺し傷や水平方向の切り傷のような損傷が残されていた。スタッフは、2人が作品を傷つける瞬間を直接見てはいなかったものの、別の展示作品に向かって卑猥なジェスチャーをし、足早に立ち去る姿を目撃していたという。数時間後、作品の損傷が確認され、同作は直ちに展示から取り下げられた。

HMAACの最高責任者ジョン・ゲスは、アートメディアHyperallergicの取材に対し、「今回の事件は、人種差別的な動機に基づくものだと確信しています」と語った。当初、同館のスタッフは絵画の修復を試みたが、最終的には損傷を残したまま再展示する判断を下した。破壊の痕跡そのものを、来館者に見てもらう必要があると考えたためだ。HMAACは声明で次のように述べている。

「私たちは修復作業を中止し、作品を再び展示室に戻しました。意見の相違が破壊に向かったとき、何が起きるのかを人々に見てもらうべきだと考えたからです。美術館は、探求や内省、対話を促すための場所です。人々が新しい考えに出会い、それを受け入れ、問い直し、ときには拒むこともできる場所です。しかし、暴力によって声を封じることは、決して許されません」

一方、ヘイワードはHyperallergicの取材に対し、今回の破壊行為に「がっかりしている」と語った。ただし、その動機については自分から断定できないとしている。そのうえで、ヘイワードはこう続けた。

「私は、内省を促し、思い込みを問い直し、対話を生み出すような作品を作っています。そうした視点が、破壊ではなく対話へとつながること。それが私の変わらぬ願いです」

ニューヨーク・タイムズによれば、事件の捜査は現在も続いており、逮捕者は出ていない。事件当日、館内の防犯カメラは正常に作動しておらず、美術館は前日に修理を依頼したばかりだったという。(翻訳:編集部)

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