アメリカ自然史博物館、先住民の毛髪2700点を返還へ──150部族との協議を進める

アメリカ自然史博物館が、19世紀の疑似科学研究の一環としてネイティブ・アメリカンから採取された毛髪2700点を返還計画に加えた。同館は各部族と協議し、過去の収集品の見直しを進めている。

アメリカ自然史博物館の外観。Photo: Getty Images
アメリカ自然史博物館の外観。Photo: Getty Images

ニューヨークのアッパー・ウェスト・サイドに位置するアメリカ自然史博物館は、19世紀に行われた疑似科学研究の一環として、ネイティブ・アメリカンから採取された毛髪を返還する計画を発表した。

ニューヨーク・タイムズ紙によれば、これらの毛髪は1893年に開催されたシカゴ万国博覧会で展示するために集められ、その後、同館のコレクションとして保管されてきた。今回、ネイティブ・アメリカン墓地保護および返還法(NAGPRA)に基づく返還対象に、万博で展示された毛髪も含まれることになった。NAGPRAは、博物館やその他の機関が保管する遺骨、葬具、その他の文化財を、アメリカ先住民の部族や関係機関に返還するための手続きを定めた法律だ。

NAGPRAが成立して間もない1990年代初頭には、研究者の一部によってこの毛髪の存在が確認されていた。連邦法は各機関に対し、コレクションに含まれるネイティブ・アメリカンの遺骸を返還するよう求めてきたが、毛髪がその対象に含まれるかについては長く曖昧な扱いが続いていた。ニューヨーク・タイムズ紙によれば、ネイティブ・アメリカンの団体や政府関係者が毛髪も返還対象だと主張し続けてきた一方で、文化機関は法の対象外と解釈してきたという。

2022年にハーバード大学ピーボディ博物館が毛髪の返還に合意したことを受け、連邦政府はNAGPRAの規則を改定した。これにより、機関側が「毛髪が自発的に提供されたもの、あるいは自然に抜け落ちたもの」と証明できない限り、毛髪も遺骸の一部として扱われることになった。アメリカ自然史博物館は現在、各部族との協議を進めるなかで、2700点に上る毛髪のサンプルを返還計画に新たに組み込んでいる。同館ではこれに先立ち、北西海岸展示室やネイティブ・アメリカン文化に焦点を当てた2つの展示室の改修も進めてきた。

博物館の関係者は、チョクトー、クリー、スーなど、返還に関係する約150の部族と協議を進めている。また、NAGPRA関連プログラムへの資金援助を拡大するよう連邦政府に要請した。アメリカ自然史博物館長のショーン・M・ディケーターは、ニューヨーク・タイムズ紙に対して次のように語っている。

「全米でNAGPRAに沿った対応を進めることは、内務省においてかつてなく重視されています。しかし、それを国家レベルで実現するためのリソースへの投資は、まだ十分ではありません」(翻訳:編集部)

from ARTnews

あわせて読みたい