アメリカ自然史博物館が先住民族124人の人骨の返還を発表。2つの関連展示室も閉鎖
ニューヨークのアメリカ自然史博物館(AMNH)は、124人の先住民の遺骨と90点の文化財を本国に返還する手続きを開始したと発表した。
7月25日、ニューヨークのアメリカ自然史博物館(AMNH)のショーン・ディケーター館長は同館スタッフに宛てた書簡の中で、「先住民の代表団の7回の訪問を受け入れるなど、約50の異なる利害関係者と400回以上の協議を行い、8回の本国返還を完了した」として、AMNHの本国返還への努力を称えた。加えて、新たに124人の先住民の遺体と90点の先住民の文化財を本国に返還する手続きを進めていると発表した。
今回の返還には、サンタ・イネズ居留地のサンタ・イネズ・バンド・オブ・チュマシュ・ミッション・インディアンへの3人の祖先の遺骨が含まれる。連邦官報に掲載された情報によると、これらの遺骨は1891年にジェームス・テリー、1924年にフェリックス・フォン・ルシャンが博物館に売却したもの。
このニュースを最初に報じたニューヨーク・タイムズによると、テリーはAMNHの人類学部門の初期の学芸員の一人で、フォン・ルシャンは最終的に頭蓋骨と骸骨の全コレクションを同博物館に売却している。
連邦政府は1990年に制定された「アメリカ先住民の墓の保護と返還に関する法律(NAGPRA)」を今年1月12日に大幅改正している。この法律は、博物館やその他の機関が、遺骨、葬具、その他の遺品を「インディアンの部族」や「ハワイ先住民の組織」に返還するための手続きとプロセスを定めたもので、今回の返還もこれに則して実行された。AMNHはまた、NAGPRA改正を受けて同館の「Eastern Woodlands」と「Great Plains」の2つのギャラリーを閉鎖したほか、アメリカ先住民の文化財に関連する複数の展示も取り下げている。
NAGPRA改正の背景には、その規制をすり抜けることがいかに容易であり、それが博物館などの機関による返還作業を何十年も遅らせているという部族代表らの主張がある。さらに2023年1月には、独立系の非営利メディア「ProPublica」が調査結果を発表し、どの期間がNAGPRAの管轄下にある遺物を最も多く所蔵しているか、また、そうした機関が遺物に「文化的に特定不可能」というラベルを貼ることで本国返還を免れてきたことを指摘していた。
事実、AMNHが所蔵する約1万2000体の人骨の約25%は、アメリカ国内のネイティブ・アメリカンにルーツを持つ個人であり、そのうち約1700体の遺骨は「文化的に特定不可能」、つまり連邦政府公認の部族やハワイ先住民の組織に確認するための十分な情報がない、と指定されていたものであることをディケーターも認めている。
ディケーターの書簡によると、同館は今年10月を目指し、閉鎖された展示室に代わる新しいプログラムを開始予定だという。この新しいプログラムの企画には、同館の学芸員デビッド・ハースト・トーマスと外部の先住民アドバイザーが携わっており、NAGPRAの歴史とその影響に関する新しいグラフィックパネル展示と、同館の「文化的ストーリーテリングへの取り組み方の変化」が含まれるという。AMNHはまた、新プログラムと同時期に、ハウデノサウニー・コミュニティのアドバイザーと協力して企画した新しいフィールドトリップ体験もスタートするという。
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