ARTnewsJAPAN

反戦デモに揺れたアート業界。美術機関などの対応を振り返る【2024年アートニュースまとめ】

パレスチナレバノンイスラエルなど中東では不安定な情勢が続いている。2023年10月に起きたハマスによるイスラエルへの攻撃以降、世界各地で起きているアート業界における一連の抗議活動を振り返る。

ニューヨーク近代美術館(MoMA)で抗議活動を行うデモ隊。Photo: Tessa Solomon/ARTnews

「イサム・ノグチの遺産への侮辱」──ノグチ美術館がケフィエ禁止令に反した職員を解雇、波紋広がる

ノグチ美術館の外で活動する抗議者たち。Photo: Tessa Solomon/ARTnews

ケフィエの着用を禁ずる服装規定が8月中旬に出されたイサムノグチ財団・庭園美術館に務める4人の従業員が、同規定に反したことから解雇された。これを受け、元従業員をはじめとする美術関係者や地域住民が館長のエイミー・ハウに退任を要求している。


歴史的な広がりを見せるガザ反戦デモに美術大学の学生と教員が参加。「アーティストは今起こっていることに向き合わなければならない」

4月23日、ニューヨークのワシントン・スクエア・パークで、イスラエルによるガザでの戦争に反対する抗議デモに参加するニューヨーク大学(NYU)の学生と教職員たち。Photo: Spencer Platt/Getty Images

イスラエルによるパレスチナへの攻撃中止を求める学生運動がアメリカ全土で広がり、5月2日現在で1000人以上が逮捕される事態となっている。その中で、美術大学の学生や教員も運動に賛同し、行動を起こしている。


ターナー賞受賞者ら600人超がテートに抗議。「イスラエルを支援する団体とは決別せよ」

テート・ブリテンの外観。Photo: Courtesy DiscoA340 via Wikimedia Commons

12月3日のターナー賞授賞式を前に、ロンドンテートの重役らに対して600人以上のアーティストやアート関係者が、イスラエルと金銭的なつながりをもつ創設者が立ち上げた芸術団体との関係を断つよう求める公開書簡に署名した。


セントラル・セント・マーチンズ校舎で学生らがデモ。「ジェノサイドを前に中立という立場はとれない」

ロンドン芸術大学の学生がセント・マーチンズ校舎のエントランスに横断幕を下げている様子。Photo: Sopa Images/Lightrocket via Getty Images

イスラエルによるガザへの攻撃に対して中立の立場をとっているロンドン芸術大学。これに対して同大学の学生団体「Students for Justice in Palestine」は、セントラル・セント・マーチンズ校舎のエントランスを占拠し、大学側に言論の自由や停戦を求める声明の発表、さらには副学長の辞任を要求した。


ブルックリン美術館の館長宅がペンキまみれ。親パレスチナ派の抗議行動のターゲットに

抗議行動の標的にされたブルックリン美術館のアン・パステルナーク館長宅。Photo: Eric Adams Via X

ブルックリン美術館のアン・パステルナーク館長の自宅がイスラエルのガザ地区攻撃に対する抗議行動のターゲットにされたことが6月12日明らかになった。


ゴールドスミス・カレッジが「主要な支援者」との関係解消を決定。学生の抗議行動が結実

ゴールドスミスカレッジの外観。Photo: via Google Maps

ゴールドスミス現代美術センター(CCA)は、資金を提供していた実業家夫妻と関係を絶ったことをこのほど発表した。夫婦がイスラエルを支援しているとして、親パレスチナ派の学生による抗議が半年ほど続いた結果、CCAの理事会から解任すると同時に寄付者銘板から二人の名が外されたという。


イスラエルとの関係を糾弾された芸術団体創設者が辞任。辞任は「信念に基づく抗議」

2021年9月27日、イギリス・ロンドンの財務大臣官邸で行われたルバイナ・ヒミッド作品の除幕式に出席したキャンディダ・ガートラー。Photo: Tristan Fewings/Getty Images for Outset Contemporary Art Fund

イギリスのアート界では、イスラエルとの政治的・金銭的関係を指摘される人物や団体と決別するよう求める動きが続いている。そんな中、糾弾の対象となっている主要な芸術団体の創設者が理事会からの辞任を発表した。


パレスチナ支持者はなぜMoMAに抗議するのか。大物パトロンとの関係など、その背景を解説

親イスラエル派のパトロンとの関係を断つよう、ニューヨーク近代美術館(MoMA)に要求するデモ隊(2024年11月12日、MoMA前で撮影)。Photo: Tessa Solomon/ARTnews

世界ユダヤ人会議に伴うディナーが開かれたニューヨーク近代美術館(MoMA)の前で、親パレスチナ派が抗議を行った。今回のデモで問題視されたのは、MoMAとそのパトロン、ロナルド・S・ローダーとの関係だ。化粧品大手エスティ ローダーの創業者を母に持つロナルドは、ニューヨークの著名美術館に多額の援助や寄贈をしている。


美大生100人超が新たに逮捕。アメリカの大学で激化する反戦デモ、逮捕者は累計2300人以上に

2024年5月4日、イリノイ州シカゴ美術館の敷地内で警察に拘束されるシカゴ美術館付属美術⼤学の学生たち。Photo: Scott Olson/Getty Images

アメリカ全土で広がる、イスラエルによるパレスチナへの攻撃中止を求める学生運動。その逮捕者は5月8日時点で約50大学、2300人を超えた。このデモ活動に参加する美術大学のうち、いずれも抗議キャンプを行っていたシカゴ美術館付属美術⼤学(SAIC)が5月4日に68⼈、7日にニューヨークファッション⼯科⼤学(FIT)で約50⼈が逮捕された。


ベルリン新国立美術館でナン・ゴールディンがドイツを真っ向批判。「なぜ事実を認めないのか」

ナン・ゴールディン。Photo: Fabian Sommer/DPA/Picture Alliance via Getty Images

開催前から物議を醸していたベルリン新国立美術館(Neue Nationalgalerie)でのナン・ゴールディン個展がついにスタートした。11月22日のプレビューイベントに現れた作家は、自身を「反ユダヤ主義」と呼ぶドイツの一部報道機関を非難し、ドイツ政府に対しても苦言を呈した。

あわせて読みたい