歴史的な広がりを見せるガザ反戦デモに美術大学の学生と教員が参加。「アーティストは今起こっていることに向き合わなければならない」
イスラエルによるパレスチナへの攻撃中止を求める学生運動がアメリカ全土で広がり、5月2日現在で1000人以上が逮捕される事態となっている。その中で、美術大学の学生や教員も運動に賛同し、行動を起こしている。
学生の抗議デモに連帯する教師たち
4月23日、ワシントン・スクエア・パークでニューヨーク大学(NYU)の美術学部の学生による抗議デモが行われ、学生たちはロバート・インディアナの象徴的なポップアート作品《LOVE》のスペルを「GAZA」に変えたプラカードを掲げた。参加した多くの学生は、法的措置や大学側からの処罰を恐れてメディアへの発言を避けたが、その中でもコメントを寄せたソルと名乗る学生は、ニュース、政治、文化の交差点で独自の活動をするのがアーティストだとし、こう語った。
「アーティストは、今起こっていること、そして今まさに大量虐殺が深刻化しているという事実に向き合わなければなりません。大量虐殺や、ある集団全体の完全な破壊と根絶に対して、ノーという言葉を突きつける必要があるのです」
4月26日、シカゴ美術館付属美術大学の近くの交差点を学生たちによるデモ隊が占拠し、デモ隊はその後、警察によって隣接するミレニアム・パークに押し出された。シカゴ・サンタイムズ紙によると、同大学のキュレーターで美術史の教授であるローダ・ローゼンは、学生たちのデモを受けて、「私たちは、シカゴ美術館付属美術学校の学生たちの行動を支持します、 そして、我々はイスラエルを支援する団体の資金援助からの脱却という学生たちの願いは実現可能だと思っています。かつて南アフリカのアパルトヘイトから利益を得ている米国企業からの投資撤退を求める声が、南アフリカに大きな影響を与えたことを思い出してください」とコメントした。
ローゼンと同様に、複数の大学の教員も学生に連帯する声明を発表している。Hyperallergicの報道によると、コロンビア大学のビジュアルアーツと音楽の教授陣は、集会と言論の自由に対する憲法上の権利を求める学生たちの声を支持する書簡を発表した。書簡には、「私たちは大学に対し、全ての停学処分の取り消しと共に、制裁を受けた学生の懲戒記録の抹消と全ての学生を直ちに寮に戻すことを求めます」と書かれている。
プリンストン大学では、教授陣が連帯して公開書簡を発表し、コロンビア大学が停学中の学生を復学させ、「自由な学問的探究と学問の自由」を示すために警察をキャンパスから排除するまで、コロンビア大学とバーナード大学との学術提携を中止し、合同の会議やその他のキャンパス・イベントに参加しないことを誓った。署名者には、美術史家のハル・フォスター、アイリーン・V・スモール、アーティストのジェームズ・ウェリングなどが名を連ねている。
対立が深まる学生と上層部
コロンビア大学では、学生たちが約2週間前から中庭の芝生にテントを張って抗議活動を続けている。街頭で行われるデモとは違って圧倒的に平和的で、穏やかでさえある。学生たちは毎日、芝生に座って本を読んだり、勉強したり、詩の朗読や詠唱、ダンス、祈りのために集まったりしている。芝生広場の北端には学生たちが「アートコーナー」を設置し、ポスターや絵画、一枚一枚にガザで殺害された人の名前を記した小さなパレスチナ国旗などで埋め尽くした。
コロンビア大学の学科長兼ビジュアルアーツ教授のマシュー・バッキンガムは、「私の印象では、(学生たちは)政治と芸術、そして芸術と生活の関係に真摯に取り組んでいるように感じました」と語った。彼は4月29日に行われた100人以上の教授やその他の職員が参加する大規模なウォークアウトに参加し、学生の停学や逮捕に反対の声を上げた。
学生デモによる混乱を受けて授業料の返金を求める声が上がる中、同大学の運営側は4月29日、今年度いっぱい対面とリモートを組み合わせたハイブリッド授業を行うことを発表した。同大学の卒業式は5月15日に予定されているが、学生たちの間では、卒業式が行われるかどうかについて疑問の声が上がっている。4月23日夜に学校運営側とデモ隊との交渉が始まり、大勢の学生と教職員が構内に押しかけたが、運営側が抗議行動を解散させるために州兵を呼ぶと脅したと学生代表が主張したため、交渉は中断した。
同日夜、コロンビア大学のネマト(ミヌーシュ)・シャフィク学長は学生団体に次のような内容の電子メールを送った。
「この話し合いが成功することを強く望みます。もし話し合いがうまくいかなければ、学生たちが学期を終えて卒業できるよう、芝生に張られたテント群を撤去し、キャンパスに平穏を取り戻すための別の選択肢を検討しなければならないでしょう」
これらの大学側の対応について、マシュー・バッキンガムは「芸術は教えられるものではない、と多くの人が言いますが、問いを投げかける環境を作ることが芸術を教える上で大切だと私は考えています。コロンビア大学をはじめとする他の教育機関と学生が対立している現実を未だに飲み込めていませんが、私は生徒たちのウェルビーイングがとても心配になりました」と話した。
Hyperallergicの取材に応じた学生たちは、イスラエルからの離脱を求める彼らのメッセージや要求が、抗議活動のメディア報道の中で失われないことを願っていると強調し、こう続けた。
「私たちが本当に必要としているのは、動員、組織、連帯、そしてガザを中心に据えることなのです」