観光名所となったアニッシュ・カプーアの巨大彫刻が、2024年まで観覧制限
シカゴのダウンタウン中心部にあるミレニアム・パークで人気を博しているアニッシュ・カプーアの巨大なパブリックアート《クラウド・ゲート》が、公園の改修工事のため、来年まで観覧できなくなることが分かった。
シカゴの文化・特別イベント局は、8月中旬に始まったグレンジャー・プラザの改修工事のため、2024年春までアニッシュ・カプーアの《クラウド・ゲート》(通称ビーン:豆)への立ち入りを関係者のみに制限する旨をウェブサイト上で明らかにした。
同局によると、「シカゴ市による改修は、グレンジャー・プラザの舗装をリニューアルするなどより利用しやすくするために必要な補修を行うもので、約20年の歴史を持つ公園の外観や快適性を向上させ、中西部ナンバーワンの観光名所としての地位をさらに確固たるものにするための措置」だという。
高さ10メートル、幅20メートル、奥行き13メートルの《クラウド・ゲート》(2006)は、パブリックアートとしては世界最大級。総工費2300万ドル(現在の為替レートで約33億円)のこの彫刻作品は、168枚のステンレス鋼板を溶接して制作され、表面は鏡のように磨き上げられている。そのため、ここを訪れる人々は、こぞって湾曲した表面に映り込む姿を自撮りしたり、記念撮影をしたりしていく。
インド出身でロンドンを拠点に活躍するカプーアは、この彫刻のあまりの人気ぶりや人々に与える強いインパクトについて、複雑な心境であることを2017年にUS版ARTnewsにこう語った。
「シカゴで《クラウド・ゲート》を公開したとき、作品の周りに何百人もの人がいる写真を見て、自分はいったい何をしたんだ、これはディズニーランドなのか?と驚きました。だから、シカゴに行って、そこで何が起きているのか理解しようと思ったのです。このオブジェには何か神秘的なものがあり、その神秘性とはスケールの大きさに関係しているのだと分かるまでにさほど時間はかかりませんでした。そして、たった1つのシンプルな結論に行き着いたのです。要は継ぎ目がないことなのだと」
クラウド・ゲートはまた、『シカゴ・メッド』、『ハニーvs.ダーリン 2年目の駆け引き』、『ミッション: 8ミニッツ』、『君への誓い』、『ザ・ビースト』、『トランスフォーマー/ロストエイジ』など、数多くのテレビドラマや映画のロケ地にもなっている。
しかし、作品の人気が招いたトラブルもある。2015年にカプーアは、中国・新疆ウイグル自治区のカラマイ市で公開された巨大オブジェが《クラウド・ゲート》に酷似していることを盗作だと批判。また、2本のビデオでこの彫刻の映像を使用した全米ライフル協会を、著作権侵害で訴えている。
なお、《クラウド・ゲート》の小型版ともいえる作品が、コロナ禍による数年の延期を経て、今年初めにニューヨーク・マンハッタンの高級住宅タワービルのエントランスで公開された。(翻訳:石井佳子)
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