アーティスト兼首相エディ・ラマ、カニエ・ウェストのアルバニア公演を支持──中止要求を一蹴
反ユダヤ主義的な発言を繰り返してきたカニエ・ウェストのアルバニア公演をめぐり、ユダヤ人団体などから批判が相次いでいる。これに対し、アーティストとしても活動するエディ・ラマ首相は、中止要求に応じない姿勢を示した。
アルバニアの首相でありアーティストでもあるエディ・ラマは、ユダヤ人団体などから批判が相次いでいた、首都ティラナ郊外でのカニエ・ウェストのコンサート開催計画に対して、開催を取りやめない姿勢を示した。ウェストは7月11日、数百万ユーロ(約数億円)を投じて建設された特設会場「イーグル・スタジアム」でパフォーマンスを行う予定だ。
ウェストは過去にホロコーストを否定する発言をし、SNSに「ユダヤ人にデスコン3(*1)を仕掛ける」と投稿して物議をかもした。その後も、反ユダヤ主義的な発言を繰り返してきたが、今年1月、ウォール・ストリート・ジャーナル紙に全面広告を掲載し、過去の反ユダヤ主義的な発言を謝罪する公開書簡を発表した。その中で、「私はナチスでも反ユダヤ主義者でもない。ユダヤの人々を愛している」と記している。
*1「death(死)」とアメリカ国防省の戦争への準備態勢を示す「DEFCON」を掛け合わせた言葉と考えられている。
アルバニアの現地メディアによると、ある有力なユダヤ人団体は、コンサートの開催はウェストの主張を「増幅」させる行為であり、「道徳的矛盾」にあたると批判している。
ニュースサイトのバルカン・インサイトによると、アルバニアの国会議員ガズメント・バルディも、ラマ首相にウェストのコンサートを中止するよう求めたという。これに対し、ラマ首相は中止を求める声を「アルバニアを毒する蠍の尾のような嘘」とFacebookで非難した。別の投稿では、次のように記している。
「80カ国から訪れる約2万5000人の観客の前でアルバニアに恥をかかせないため、土壇場で400万ユーロ(約7億4000万円)を投じた。その一方で、多くの人々がコンサートの中止を恐れて怯えている」
「フラミンゴ革命」と呼ばれる退陣要求に直面するラマ首相にとって、今回の騒動は新たな政治的逆風となっている。この運動の背景にあるのが、ドナルド・トランプ大統領の娘婿ジャレッド・クシュナーが率いる投資グループによるリゾート開発計画だ。ラマ政権が、フラミンゴの生息する湿地帯周辺で計画を進めようとしていることに市民が反発しているが、ラマ首相はこうした抗議を「イデオロギーに基づいたたわごと」と一蹴している。ほかにも政権は、今年初めに汚職疑惑で捜査を受けていた副首相を解任するなど、厳しい世論の目にさらされていた。
2013年からアルバニアの政権を握るラマ首相は、アーティストとしても広く知られており、彼が手がけてきた作品は、ヴェネチア・ビエンナーレからサンパウロ・ビエンナーレにいたるまで、世界各地の主要な芸術祭で展示されてきた。イギリスのガーディアン紙は2016年に、「ラマは極めて稀有な存在だ。芸術的傾向を持つ政治家なのではなく、権力の座にある本物のアーティストなのだ」と評している。現在、ラマ首相はマリアン・グッドマンギャラリーとソシエテに所属している。
ラマ首相は現在も制作活動を続けており、先月には、スイスの街中に大型作品を展開するアート・バーゼルの「パルクール」に参加した。出品したのは、首相公邸での執務中に描いたドローイングを基に制作したブロンズ彫刻《Untitled》だった。(翻訳:編集部)
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