トランプ大統領が深夜に「謎の愛国絵画」を投稿。ロボット、聖書、建国神話が交錯するその意味とは
ドナルド・トランプ大統領が深夜、一枚の絵画をSNSに投稿した。アメリカ史を象徴するモチーフが詰め込まれた謎めいた作品の作者と、愛国的イメージの背景を読み解く。
アート作品を見ていると、さまざまな疑問が浮かんでくる。なかには、思わず「なんだこれは」と口にしたくなるようなものもあるだろう。ドナルド・トランプ大統領が自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に投稿したある絵画を見た人は、まさにそう感じるかもしれない。
6月28日の深夜、トランプ大統領はアメリカの歴史を題材にした絵画らしき画像をが投稿した。そこには、アメリカ建国の父のひとりであるジョージ・ワシントン、第二次世界大戦中に硫黄島で国旗を掲げるアメリカ兵、月面に降り立った宇宙飛行士、そしてトランプ大統領自身が描かれている。さらに、自由の女神やラシュモア山といったアメリカを象徴する名所も盛り込まれていた。
謎に満ちた絵画は何を意味するのか
ここまでは、定番でわかりやすいモチーフだが、小さな男の子の隣には、時代がかった服装の男性とロボットが座っているのが見える。彼らは、花火を見上げながら何を話しているのか。画面右端に描かれたロケットがどこへ向かっているのか、あるいは、ろうそくの灯りを頼りに国旗を縫っている女性が何者なのかわからない。アメリカ初の星条旗を縫製した人物として伝え継がれる一方、その逸話は現在、多くの歴史学者によって疑問視されているベッツィー・ロスでないことを祈るばかりだ。
作品そのものについても疑問が残る。作者は誰で、どこに展示されているのか。トランプ大統領は投稿で、「素晴らしい絵だ! DJT大統領」とだけ書いており、作者名も展示場所も明かしていない。こういうときこそAIの出番だろう。Google 検索のAI モードによれば、この作品はAIで生成された画像ではないという。もっとも、AIと完全に無関係というわけでもなさそうだ。
検索の結果、この作品はレイ・サイモン(Ray Simon)というアーティストによるプリント作品であることが判明した。彼のウェブサイトには「アメリカを描いたアーティスト」という肩書きが掲げられている。ところが、紹介文は「レイモンド・A・サイモンは単なるアーティストではなく、アメリカの時代精神を伝えるパイプ役なのです」と締めくくられており、作家紹介というより、かなり大げさな自己演出に近い。なお、その「時代精神」にまつわる物語の多くに、有色人種は登場しないようだ。彼の作品のなかで有色人種が描かれているものは限られており、たとえば「偉大な解放者」としてエイブラハム・リンカーンを称える作品に、解放された黒人の子どもたちが寄り添う例などにとどまっている。
トランプ大統領が絶賛した肖像画は約70万円
オハイオ州を拠点とするサイモンは、トランプ大統領と何らかのつながりがあると見られる。彼のウェブサイトによれば、サイモンが描いたトランプ大統領の肖像画は、トランプ大統領の私邸であるマール・ア・ラーゴに飾られたことがあるという。サイモンは、トランプ大統領がこの肖像画をすっかり気に入り、これまで見た肖像画のなかで「最高傑作」と評したとも主張している。なお、US版ARTnewsは記事公開時点でこの事実を確認できていない。《The Awakening》と題されたこの作品は、サイモンのサイトで4547ドル(約74万円)で購入できる。
トランプ大統領が投稿した作品は、《Forged in Freedom》と題され、サイモンのウェブサイトでも公開されている。アメリカの保守活動家であるチャーリー・カークやハクトウワシ、イエス・キリスト、海兵隊・海軍の退役軍人を描いた、愛国色や宗教色の強い作品群のなかに並ぶ本作を、サイモンは建国250周年を目前に控えたアメリカ史へのオマージュと位置付けている。250周年にちなみ、250枚限定のプリントが1枚250ドル(約4万円)で販売されている。
建国の遺産と未来をつなぐ架け橋
作品解説を読むと、この不思議な作品がどのような意図で制作されたのかが少し見えてくる。サイモンは、「この絵の中心には、植民地時代の人物が人型ロボット『Teslaオプティマス』の隣で少年の肩に腕を回して座っています。これは、アメリカ建国の遺産と未来の可能性をつなぐ架け橋なのです」と説明している。Teslaオプティマスとは、テスラが開発する二足歩行の自律型ヒューマノイドだ。同社の創業者であるイーロン・マスクに対するトランプ大統領の評価は、これまで賞賛と非難のあいだで揺れ動いてきた。
解説をさらに読み進めると、リンカーンとともに教会へ向かって歩いている男性がマーティン・ルーサー・キング・ジュニアであることもわかる。また、この作品では独立宣言の署名が行われているテーブルに聖書が置かれており、サイモンによれば、それは「神の下にあるひとつの国家」としてのアメリカを象徴しているという。ちなみに、独立宣言の署名場面を描いた歴史画に聖書は登場しない。独立宣言にも神への言及はあるが、聖書からの引用や聖書を踏まえた表現は含まれていない。
確かに、サイモンの作品はトランプ大統領がこれまでSNSに投稿してきたAI生成画像とどこか似ている。ただし、サイモンのウェブサイトには、この作品にAIを使ったという説明は見当たらなかった。とはいえ、2025年にサイモンは、黒人の子どもたちに囲まれたリンカーンの作品をAIでアニメーション化した動画をTikTokに投稿している。そのキャプションには、「歴史とAIの融合」と添えられていた。(翻訳:編集部)
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