「香りの視覚化」という挑戦の軌跡──光と香り―ガラス香水瓶コレクション展【EDITOR'S NOTES】
高砂コレクション®ギャラリーで香水瓶にフォーカスした「光と香り―ガラス香水瓶コレクション展」が開催中だ。古代から現代までの香水瓶が並び、人が香りをかたちで表現しようとする軌跡を見ることができる展示だ。

香水は目に見えない。しかし私たちは香水を、香りだけで認識しているわけではない。香水瓶を手に取ったときの重さ、ガラス越しに透ける液体の色、光の反射、栓を開ける所作──ボトルという「器」を通して、香りの世界を知覚している。
東京・蒲田の高砂コレクション®ギャラリーで開催中の「光と香り―ガラス香水瓶コレクション展」は、そんな香りとボトルの関係をたどる展覧会だ。人類によるガラスの発明は紀元前25世紀頃のオリエント地方にさかのぼるとされ、古代エジプトやローマでは、すでに香油を保存する容器として用いられていた。会場には、古代のガラス製香油瓶から19世紀ボヘミアの華麗な香水瓶、ルネ・ラリック、現代作家の作品までが並ぶ。ケイ酸を主成分とするガラスは、添加物や加工によって色彩や透明度、質感を自在に変える。その可塑性は、香りという捉えどころのない存在に「かたち」を与えるのに、ことのほか適していたのだろう。展示作品群からは、人類が香りの芳しさをなんとかして視覚化しようとしてきた熱情を強く感じる。
ガラス工芸の歴史として香水瓶を見せるというアプローチも秀逸だ。なかでも、香水とガラス工芸の幸福な関係を象徴する存在がルネ・ラリックだ。20世紀初頭、香水商フランソワ・コティとの協業などを通じ、香水瓶は中身を保存するだけの容器から、香水のイメージそのものを伝えるデザインへと発展していった。高砂コレクションにも、ラリックをはじめガレやドーム兄弟など、工芸作品として鑑賞に耐える香水瓶が収蔵されている。
どれほど優れた香りでも、ボトルやパッケージから切り離してブランドの世界観を構築することは難しい。音楽にジャケットがあり、本に装丁があるように、香水にとってボトルは香りを包む「視覚の作品」なのだ。それは現代の香水においても変わらない。本展ではさらに、東京ガラス工芸研究所と富山のガラス作家・池田充章の協力による新作香水瓶と制作映像も紹介される。
光を受け、透過し、屈折するガラスの内部に香りを封じ込める香水瓶は、工芸品であると同時に、香りを視覚へと翻訳するメディアなのだということがよく理解できる展覧会だ。
光と香り―ガラス香水瓶コレクション展
会期:2026年7月13日(月)~12月11日(金)
場所:高砂コレクション®ギャラリー(東京都大田区蒲田5-37-1 ニッセイアロマスクエア17F)
時間:9:00~17:00 (第3金曜日19:00まで、入場は閉館30分前まで)
入場無料











