美術館の床に390キロの「粒なしピーナッツバター」!? オランダの異色作家を代表作で追悼

オランダのボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館が、今年6月に亡くなったアーティスト、ウィム・T・シッパーズの追悼展示を開催している。会場では、390キログラムのピーナッツバターを床に塗った代表作、《Pindakaasvloer(ピーナッツバターの床)》が公開されている。

ウィム・T・シッパーズ《Pindakaasvloer》(1969) Photo: Museum Boijmans Van Beuningen. © Raaf Blanker
ウィム・T・シッパーズ《Pindakaasvloer》(1969) Photo: Museum Boijmans Van Beuningen. © Raaf Blanker

オランダ・ロッテルダムの美術館、ボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館は、今年6月に亡くなったアーティストのウィム・T・シッパーズを追悼するため、展示室の一角に390キログラムのピーナッツバターを塗り広げた。25平方メートルの六角形に形づくられたこの作品は《Pindakaasvloer(ピーナッツバターの床)》と題され、1969年に初めて発表された。

展示空間には、シッパーズが残した制作指示書も添えられている。それによると、作品には床1平方メートルあたり15.6キログラムの粒なしピーナッツバターを使用し、「できる限りなめらかに、そしてつまらなさそうに」塗り広げなければならない。完成した作品の上に立ったり寝転がったりすることは禁じられており、教育目的であっても触れてはならないという。

ピーナッツバターが塗り広げられる様子。Photo: Museum Boijmans Van Beuningen. © Raaf Blanker

ボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館は2011年にも本作を公開しているが、会期中には4人の来場者が誤って作品を踏んでしまった。同館はかれらに復元費用を請求したという。また、1997年にユトレヒトのセントラル美術館で展示された際には、見学に訪れた小学生たちが、12切れのパンとオランダのチョコレートスプリンクル「ハーゲルスラッハ」を作品の上にばらまく「破壊行為」に及んだ。オランダの定番おやつを再現したこの行為に対し、シッパーズは、「全体のバランスを考えて、ハーゲルスラッハを手際よく振りかけましたね」と、その出来栄えを褒めている

食べ物は、シッパーズが好んで用いた素材のひとつだ。ピーナッツバターを床に塗り広げるほかにも、イスを缶詰の麺で覆った作品や、テーブルを豆で埋め尽くした作品を手がけている。1960年代初頭には、アート・コレクティブ「A-dynamische groep」を共同で立ち上げた。サボテンの棘を剃り落としたり、ギャラリーをガラスの破片や塩で埋め尽くしたりする過激なパフォーマンスを通じて、アート界の商業主義や権威主義的な堅苦しさに抵抗した。その後はテレビ界にも進出し、コメディ俳優として活動したほか、「セサミストリート」のアーニー、カウント伯爵、カーミットの吹替声優も務めている。

《Pindakaasvloer》は9月6日まで展示される。会期中、美術館のレストランではピーナッツバター・サンドイッチがメニューに加わるほか、来館者が作品を自宅でも再現できるよう、ミュージアムショップでは粒なしのピーナッツバターも販売されるという。

あわせて読みたい