絵柄付きのコンドームは富と教養の証だった!? 200年前の避妊具がアムステルダム国立美術館で展示中

オランダ・アムステルダム国立美術館で、1830年代に作られたコンドームが展示中だ。同館で行われている「Safe Sex?」の一部として展示されているこの避妊具には、修道女と聖職者を描いた風刺画が施されており、当時の高級娼館の記念品とみられる。

修道女と聖職者の絵の下には「私はこれにする」と書かれている。Photo: Kelly Schenk/Rijksmuseum
修道女と聖職者の絵の下には「私はこれにする」と書かれている。Photo: Kelly Schenk/Rijksmuseum

レンブラントの《夜警》やフェルメールの《牛乳を注ぐ女》など、数多くの傑作が収蔵されているアムステルダム国立美術館で新たに収蔵されたのは、コンドームだ。19世紀の性労働とセクシュアリティに関する展示の一部として公開されているこのコンドームには、興奮した3人の聖職者を指さす修道女が描かれている。

1830年ごろに作られたと推測されているこの避妊具は、羊の腸で作られており、フランスの高級娼館の記念品だと考えられている。描かれた絵の下には「Voilà mon choix(私はこれにする)」と書かれており、トロイの王子パリスが3人の女神のなかから最も美しい者を選んだ神話、パリスの審判と宗教的な禁欲主義を風刺したものだ。アムステルダム国立美術館の版画キュレーター、ジョイス・ゼレンは、Hyperallergicの取材に対しこう語る

「これは宗教的な禁欲に対する一種の風刺を示していますが、絵の構図は明らかにパリスの審判を意識したものでもあります。私が思うに、このような絵が描かれた高級コンドームを使っていた人々は、おそらく裕福で教養のある人物だったのではないでしょうか」

羊の腸でできたコンドームは、洗って再利用されることもあったようだ。Photo: Kelly Schenk/Rijksmuseum
羊の腸でできたこのコンドームの長さは20センチメートルと、現代の平均よりやや大きい。洗って再利用されることもあったようだ。Photo: Kelly Schenk/Rijksmuseum

展示中のコンドームは、オランダ・ハールレムで2024年11月に開催されたオークションで、1000ユーロ(現在の為替で約16万円)で落札されたという。避妊具が公開されている展示室は、梅毒の危険性に関連した展示や、コンドームが普及した背景に関する展示で構成されている。医学出版物からの画像や資料も展示には含まれており、成人として梅毒に感染した人々や、子宮内で感染した後に先天性欠陥を持って生まれた人々の記録も含まれている。

とはいえ、当時は妊娠を避けるために避妊具を使うことはキリスト教的に許されていなかったという。また、ゼレンによれば、当時は性病について公に語ることが社会的にタブーだったことから、「皮膚病」といった曖昧な表現を医療従事者は用いていたという。こうした状況下でコンドームは、娼館や理髪店で密かに販売されており、オーダーメイドの避妊具を扱う店もあったという記録が残っている。

コンドームが展示されている展覧会「Safe Sex?」は11月まで開催される。キュレーターのゼレンがこの避妊具にUVライトを照射したところ、使用された形跡はなかったという。

あわせて読みたい