V&Aに「組織的な人種差別の文化」の可能性──元学術プログラム責任者が書簡で内部告発

ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)の元学術プログラム責任者が、同館には「組織的な人種差別の文化」があるとする書簡を提出した後、辞任していたことが明らかになった。書簡には学生らの証言も添付されていた。

The Victoria & Albert Museum in London after its reopening in 2020. KGC-247/STAR MAX/IPx
ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館。Photo: KGC-247/STAR MAX/IPx

ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)の元学術プログラム責任者の菊池裕子が、同館には「組織的な人種差別の文化」があると内部告発した後、1月下旬に辞任していたことが分かった。The Art Newspaperが7月20日に報じた

菊池はV&A館長であるトリストラム・ハント(Tristram Hunt)およびV&A研究委員会の理事らに宛て、1月26日付で書簡を送付した。書簡の中で菊池は、同館には「組織的な人種差別の文化が存在する可能性が高い」と指摘するとともに、この書簡を「内部告発」であると位置づけた。菊池は、V&Aとロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)が共同運営する修士課程「デザイン史(MA History of Design)」の責任者も務めていたが、告発の理由を、「(自身が担当する)学生から寄せられた問題は、自らが行動を起こさなければ対処されないと考えたため」としている(US版ARTnewsはこの書簡を確認していないが、The Art Newspaperは内容を確認したと報じている)。

菊池はThe Art Newspaperのインタビューで、「初日から歓迎されていないと感じていた」と語り、自身が提案した取り組みに対する抵抗や重要な会議からの排除など、繰り返しマイクロアグレッション(無意識の偏見に基づく言動)を受けたと主張した。また、同僚からは、ほかの職員との会話では「脱植民地主義」や「ポストコロニアル」といった言葉の使用を避けるよう助言されたとも述べている。

一方、V&AとRCAは、The Art Newspaperに対する共同声明で、「私たちは多様性を尊重し、差別をなくし、平等な機会の促進に取り組んでいます。あらゆる形態の違法な差別に断固として反対しており、差別事案や安全でない学習環境に関する報告は極めて重大に受け止めています」と述べた。

さらに声明では、「V&Aとロイヤル・カレッジ・オブ・アートが共同で運営するデザイン史修士課程では、教育と研究を通じて、社会正義、脱植民地化、グローバル・ヒストリーに関する問題を批判的に扱うことを不可欠な要素としています」と説明している。

菊池の書簡には、デザイン史修士課程の学生による証言をまとめた付録も添えられており、そこでは学生たちが自身の経験した人種差別や文化的配慮の欠如、「安全ではない」学習環境について記している。The Art Newspaperは、同様の懸念を示した複数の学生にも直接取材したとしている。

これに対しV&AとRCAは、「(デザイン史修士課程では)教育・学習における公平性、多様性、インクルージョン(DE&I)の観点について、学生が定期的に意見を述べ、振り返る機会を設けています。また、V&AとRCAは、学生から寄せられた懸念に対応するため、専用の会議やその後の協議を継続的に実施しており、教育内容、学生支援、教職員の育成を強化するためのさまざまな取り組みを進めています」と回答した。(翻訳:編集部)

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