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ファレル・ウィリアムスがアートに見る夢──マイノリティ支援と中国進出【アートを愛するセレブたち Vol. 5】

「Happy」などのヒット曲や、ファッションアイコンとして世界中を魅了するファレル・ウィリアムス。2月14には、2021年11月に急逝したヴァージル・アブローの後任として、ルイ・ヴィトンのメンズ・クリエイティブディレクター就任が報じられた。様々なプロジェクトを展開するビジネスパーソンでもある彼が2022年にローンチした、デジタル・オークションハウス「Joopiter」の急成長とともに、世界のアート市場で彼が目指すものとは。

2023年2月5日、カリフォルニア州ロサンゼルスのCrypto.com Arenaで開催された第65回グラミー賞に出席したファレル・ウィリアムス。Photo: Axelle/Bauer-Griffin/FilmMagic

コレクターたちが交流する場を作りたい

「芸術作品は、所有者が変わると放つエネルギーも変わります。そんなエネルギーと、作者がその作品に込めた価値を丸ごと尊重したい──そんな想いから立ち上げた『Joopiter』は、私自身と私のキュレーター仲間のために立ち上げた新しいプラットフォームです。現在のコレクターや未来のコレクターたちが、親睦を深めたり情報交換したりする場として利用されることを願っています」

2022年9月、中国JING DAILY誌にこう語ったファレル・ウィリアムスは、言わずと知れた世界のミュージックシーンのスーパースターだ。と同時に、1600個ものスワロフスキークリスタルを散りばめたスタンスミスをはじめとするアディダスとのコラボレーションや、日本人デザイナーで現在ケンゾーのアーティスティック・ディレクターも務めるNIGO®と共同展開するストリートウェアブランド、Billionaire Boys Club(BBC)を手がけるマルチクリエイターでもある。

アートを通じて社会的弱者のために尽力する活動家でもある彼は、アメリカ国内では成功の選択肢が少ない黒人の若者たちや、パンデミックや自然災害で大打撃を受けた黒人のアーティストをサポートするため、常に新たな才能を発掘し続けている。

そんな彼に見出された若き才能の一人が、タイラー・ザ・クリエイターだ。タイラーは、2019年に山下達郎の楽曲のサンプリング曲で日本でも大きな注目を集めたラッパー&ファッションデザイナーとして、現在も快進撃を続けている。

ウィリアムスが2022年9月にデジタル・オークションハウス「Joopiter」をローンチした背景には、自身が所有する膨大なアート・コレクションを売却するという目的があった。同年11月に開催された初回のオークションには、Jacob & Co.のペンダントやルイ・ヴィトンのモノグラム・トランク、そして、ウィリアムスが2003〜2004年に頻繁に着ていた母校のジャケット等々、自身がキュレーションした1点もののプライベートコレクション全52点を出品(これら全ての出品作品は、2022年10月14〜15日にニューヨークで一般公開されている)。218万ドル(約3億円)で落札されたアイコニックなキャラクターチェーンペンダント「Son of a Pharaoh」を含め、合計525万ドル(約7億円)を販売。利益の一部は、黒人やラテン系の起業家を支援する「Black Ambition」の活動に充てられた。

次のステージは中国。新たな才能にも注目

「Joopiter」での初回オークションでの大成功を受け、ウィリアムスは現在、マーケット拡大のため中国への進出を図っているという。2021年時点で世界第2位のラグジュアリー市場となった中国は、アート市場でもアメリカに次いで第2位。富裕層の数もアメリカを上回るペースで増加しており、その数は2025年までに現在比で80%も増加すると予想されている。

さらに、ルイ・ヴィトン×シュプリームのカプセルコレクションなどのコラボレーションアイテムや、高級ストリートウェアとスニーカー人気が高まっていることから、自身のコレクションの中でもルイ・ヴィトン×BBCのトランクとスタンスミスのスニーカーが格好の“売れ筋”だと見ている。加えて、2017年のアリババのシングルズ・デイ・ガラや、2018年の北京でのイベントでのパフォーマンス、そしてアディダスなどとの中国限定デザインを手がけてきたウィリアムスの知名度が、インターネット上で厳しい規制が強いられている同国でも高まっていることも追い風になると見ているようだ。

新たな才能発掘にも余念がないウィリアムスは、現在アート・バーゼル・マイアミビーチで発見したアーティストデュオ、FriendsWithYouの粘土作品に強い関心を示しているという。サミュエル・アルバート・ボークソンとアルトゥーロ・サンドヴァルの2人からなるFriendsWithYouは、「Magic」「Luck」「Friendship」をテーマにしており、作品を通して人々の内面にある愛と喜びを育みながら、人間同士や地球に対しての思いやりや癒し、そして分かち合える環境の創造を目指している。同イベントに毎年立ち寄る彼は、オールブラックのアンサンブルに、グリッターフレームのサングラスと帽子で会場に現れ、約1時間ほど滞在。「Adventus」と題したクレイ作品を含め、熱心に写真を撮っている姿が注目を集めていた。

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