ナチス略奪美術品の来歴調査にAI活用。先住民文化財返還への応用にも期待

ナチスによって略奪された美術品の来歴を検索できる会話型AIが公開された。4万点以上のデータをもとに、返還されていない作品や旧所有者に関する情報を調べることができる。

第二次対戦中にナチスが設置した美術品の略奪部隊「全国指導者ローゼンベルク特捜隊」によってジュ・ド・ポーム国立美術館に集められた作品。Photo: Universal History Archive/Universal Images Group via Getty Images
ナチスが設置した美術品の略奪部隊「全国指導者ローゼンベルク特捜隊」によってジュ・ド・ポーム国立美術館に集められた作品。Photo: Universal History Archive/Universal Images Group via Getty Images

7月初め、カリフォルニア州のサンタクララ大学の研究チームが、ナチス略奪された美術品の来歴を調べられる会話型AIAI Provenance Research」を公開した。第二次世界大戦中に奪われた美術品について自然言語で質問できるツールで、4万点以上の情報を収録したオンラインデータベースをもとに構築されている。

開発したのは、同大学で経営学を教えるマイケル・サントロと、情報分析を専門とするハイビン・ルー、ミケーレ・サモラニの3人。複数の言語で公開されているデータベースやカタログから来歴情報を集約し、資料を横断して検索できるようにした。

サントロがこのプロジェクトに着手したきっかけは、友人のティモシー・ライフが、ユダヤ系オーストリア人の先祖から略奪された作品を探し出すために10年を要したことだった。米国際貿易裁判所の裁判官を務めるライフは、これまでにエゴン・シーレの作品11点を取り戻している。サントロは、欧米の美術館が所蔵する先住民族の美術品や遺物の返還支援にも「AI Provenance Research」の技術を応用できるとみている。

AI Provenance Researchの構築にあたり、研究チームは、パリのジュ・ド・ポーム国立美術館が運営するデータベースを活用した。2010年に公開された同データベースには、1940年から1944年にかけて、ドイツ占領下のフランスでユダヤ人から略奪された4万点以上の美術品に関する情報が収録されている。これらの作品は、当時ナチスが選別施設として利用していた同館に集められ、その後の処分に向けた作業が進められた。

ルーは声明で、この会話型AIについて、ユーザーが自然言語で質問を入力すると、システムが内容を検索に必要なコードへ自動変換すると説明している。

一方、本稿執筆時点では複数の不具合も確認された。「ナチスの指導者に送られた美術品を教えて」「1946年に返還された作品の一覧を出力して」などと入力すると、「本サービスは一時的に利用できません。バックエンドが動作しているか確認してください」といったエラーメッセージが表示された。また、質問と無関係な内容を含むCSVファイルへのリンクが示されるケースも少なくなかった。

フランスの銀行家ダヴィッド・ダヴィッド=ヴェイユのコレクションに含まれる作家を尋ねた際には、エドガー・ドガやウジェーヌ・ドラクロワなどの作家を含む一覧が出力された。しかし、回答には「トルキスタン」や「17世紀フランス」など、コレクションと関係のない情報も混在していた。

今後は、回答の精度を高めるだけでなく、ジュ・ド・ポーム国立美術館のデータベース以外にも参照先を広げる必要がある。開発チームは、本プロジェクトに関する論文の発表を目指す一方、弁護士や来歴調査の専門家を雇用するための財団設立も構想しているという。(翻訳:編集部)

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