フランスの記録的猛暑が「モネの庭」を直撃──睡蓮は旺盛も、一部の花は全滅

フランスを襲う記録的な熱波が、モネの代表作《睡蓮》を生んだジヴェルニーの「クロード・モネの家と庭園」にも深刻な影響を及ぼしている。庭園の花が枯れるなか、庭師たちは歴史的景観を守るために酷暑への対応を迫られている。

「クロード・モネの家と庭園」の睡蓮の池。Photo: Getty Images. Photo by Barry King/WireImage

フランスは今夏、記録的な熱波に繰り返し見舞われている。各地で大規模な山火事が発生したほか、フランス公衆衛生局によると、6月17日から7月22日までの熱波期間中、同国では実際の死亡者数が平年の予測を少なくとも7007人上回った。酷暑は各地の庭園にも深刻な影響を及ぼしており、ノルマンディ地方ジヴェルニーの名所「クロード・モネの家と庭園(Maison et jardins de Claude Monet)」も例外ではない。

「クロード・モネの家と庭園」は、クロード・モネ(1840~1926)が1883年から亡くなるまでの43年間を過ごした邸宅やアトリエ、庭園を保存・公開する施設だ。モネが自ら設計した庭園は、邸宅前に広がる「クロ・ノルマン(Clos Normand)」と、睡蓮の池を中心とする「水の庭(Jardin d’eau)」に大きく分かれている。モネはこれらの庭を、「睡蓮」シリーズをはじめとする数々の作品に描いた。

今年の猛暑について、同施設の副主任庭師レミ・ルクートルはFrance 24の取材に、「ここまで広範囲に被害が出たのは初めてです。ひどい状況で、とても悲しいです」と語った。

全滅した花も。夜間の集中灌水で対処

ルクートルが取材陣を案内したのは、例年ならこの時期にナスタチウム(キンレンカ)が茂っているはずの一角だった。しかし、花は暑さによって枯れてしまっていた。ルクートルら庭師のチームは、植物を密集させたり、暑さに弱い花に夜間の水やりを集中させたりして、庭を守ろうと手を尽くしている。複数の報道によれば、こうした対策は成果を上げつつあり、被害の多くは近づいて注意深く見なければ分からない程度に抑えられているという。

2015年の庭園の様子。Photo: Wikimedia commons

ルクートルはFrance 3に、「小型スプリンクラーと地中灌漑によって、水分不足によるストレスに対処することができました」と説明する。ただし、被害を完全に防げたわけではない。彼は次のように続けた。

「それでも、一部の葉には葉焼けが起きました。植物の内部では生理的な変化が生じています。気孔を閉じ、花を咲かせるのをやめてしまうのです。そのため、多くの花がしおれました。暑さに適応し、解決策を見つけることも庭師の仕事です」

歴史的な「モネの庭」であることのジレンマ

ルクートルとチームは今後、暑さに強い植物への植え替えも検討している。また、猛暑によって植物本来の生育サイクルが乱れていることから、開花時期の早まりを見越した庭園管理も進める方針だ。しかし、こうした対応は別の難題をもたらす。緑色の縁取りが施されたピンク色の邸宅とともに保存されてきたこの庭園は、モネの時代を完全に再現したものではないにせよ、印象派の巨匠が絵画に描いた花々の風景を想起させる場所でなければならないからだ。

「歴史的な庭園ですから、植物はその美的基準を満たし、モネが知っていたものにできるだけ近いことが望ましいのです」とルクートルは語る。一方で、庭師たちは必要に応じて手を加えることもためらわないという。「結局のところ、ここは展示物のように固定された庭ではなく、時代とともに変化していく空間なのです」

実際、モネ自身も、多種多様な植物で満たされた庭を望んでいた。わずか数週間しか咲かない花々を、時期をずらしながら次々と開花させ、庭そのものがひとつの芸術作品となるような構成を試みていたのだ。「短い周期で咲く植物を大量に植える。それこそが、ここジヴェルニーの庭ならではの価値です」とルクートルは説明する。

暑さに強い睡蓮は無事

幸い、モネが愛した花のなかには、気温の上昇をものともしないものもある。代表作で知られる睡蓮だ。睡蓮は暑さを好み、現在も旺盛に育っているという。

2026年はモネの没後100年に当たり、これを記念して秋には複数の展覧会やイベントが予定されている。パリのオランジュリー美術館では、9月30日から「モネ:時を描く(Monet: Painting Time)」を開催(2027年1月25日まで)。また、マルモッタン・モネ美術館では9月24日から、「風景の物語:モネからホックニーまで(1890~2025)(Histories of Landscape: From Monet to Hockney (1890–2025))」が開幕する(1月30日まで)。モネの作品と近現代のアーティストによる表現を対話させながら、風景画の変遷をたどる展覧会だ。(翻訳:編集部)

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