同じ絵柄の34枚のポストカードが語ること──オリオール・ヴィラノヴァ「Original Copy」【EDITOR’S NOTES】
KOTARO NUKAGAでは、2026年ヴェネチア・ビエンナーレのスペイン館代表アーティストであるオリオール・ヴィラノヴァによる個展「Original Copy」が開催中だ。20年以上かけて集められた同じ絵柄のポストカードには、作家の果てしない収集の軌跡と、カード1枚1枚が辿ってきた時間が宿る。

本棚や飾り棚、レコードやCDの山。他人が集めたものは、その人の偏愛や生きてきた時間の軌跡がそのまま滲み出ていて心を惹かれる。
いまKOTARO NUKAGAのギャラリーに足を踏み入れると、スペイン人アーティスト、オリオール・ヴィラノヴァが集めたポストカードが目に飛び込んでくる。真っ白な壁には、同じ絵柄のポストカードを何枚も集めて一つの作品としたシリーズ──例えば、雪をかぶった富士山が10枚、きらきらと輝く金閣寺が19枚など──が、同じ高さで一直線に並ぶ。いずれも観光地のみやげ物屋で見かけそうな、おなじみの風景だ。あるいは、《North Horizon》(2026)と題された作品は、ベルギーの海岸を写した同じ絵葉書34枚を横一列に並べて構成されている。
ポストカードの1枚1枚をよく見ると、実は端が折れていたり、どこか色あせていたり、消印がついていたりと、誰かの手を介した跡がある。
そう、このポストカードは文房具屋で同じものを買ったわけではなく、ヴィラノヴァが20年以上も蚤の市や古物店に通い詰めて集め続けたものだ。ある街の蚤の市で1枚目を買い、何年か後に別の国の蚤の市でまったく同じ絵柄の2枚目を見つける。そんなふうにして、たまたま集まったポストカードが並んでいるわけだ。そう思って観ると、ホワイトキューブに並ぶ同じ柄のポストカードの奇跡的なめぐりあわせに感動する。
ヴィラノヴァは、現在開催中の2026年ヴェネチア・ビエンナーレのスペイン館代表アーティストでもある。スペイン館で発表した《Los restos(残されしもの)》は、「禅」の精神性や「侘び寂び」にインスピレーションを得て余白を活かしたというKOTARO NUKAGAでの展示と異なり、さまざまな柄の5万枚以上ものポストカードで展示空間の壁を埋め尽くし、世界中から訪れる人々がイメージの渦に包まれるようなインスタレーションだ。それは、異なる国から訪れる来場者が、モチーフのなかになにかしら自分との接点を感じられるようにという配慮でもあるという。

集めること自体の偏愛はもちろんのこと、長年かけて手に入れた膨大なコレクションを、空間やオーディエンス、土地の文化に合わせてどう見せるか。あれこれ試行錯誤しながら空間を編み上げていくその作業にアーティストの思考が宿る。
旅先からポストカードを送るとき、その1枚に自身の経験や物語を綴る人も多いだろう。壁に並んだ作品の前に立つと、作家自身が20年以上かけて集めた収集の旅路と、カード1枚1枚が辿ってきた見知らぬ誰かの時間という、いくつもの軌跡が重なり合っていることに気づく。ヴィラノヴァは、それらすべての物語をひとつの展示へと編み上げ、鑑賞者に宛てて送り届けている。それを鑑賞する行為は、ポストカードという複製品から、いかに多くの物語を読み解けるかという謎解きゲームのようだ。
オリオール・ヴィラノヴァ「Original Copy」
会期:2026年8月1日(土)~9月12日(土)
場所:KOTARO NUKAGA(東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル2F)
時間:11:30~18:00(火~土)
入場無料











