モネの《睡蓮》と希少な妻カミーユ像が競売へ──名門コレクション由来の2作品、総額100億円超

クロード・モネを代表する睡蓮シリーズの一作、そして妻カミーユの肖像画が、6月下旬にロンドンサザビーズで開かれるオークションに出品される。モネのキャリアにおけるこの2作品の制作時期、そして大富豪のコレクター夫妻がそれぞれを所蔵していた来歴の確かさに関心が集まっている。

クロード・モネ(1840-1926) Photo: Bettmann Archive

6月24日、サザビーズロンドンが、近現代イブニングセールにクロード・モネの作品2点を出品する。1つはジヴェルニーの自宅にある庭の睡蓮を描いたもの、もう1点は妻のカミーユを描いた肖像画で、いずれも過去に著名コレクターが所蔵していた。2点とも同じ匿名の売り主からの出品だが、前回オークションに登場してからさほど経過していないこの時期に、再び市場に出されることになった。

その来歴を見ると、予想落札価格3000万~4000万ポンド(最近の為替レートで約64億2000万~85億6000万円、以下同)の《睡蓮》(1907)は、コレクターのアン・バスが所蔵していたことがある。また、予想額700万~1000万ポンド(約15億~21億4000万円)の《Camille assise sur la plage à Trouville(トゥルーヴィルの浜辺に座るカミーユ)》(1870-71)は、ペギー&デイヴィッド・ロックフェラー夫妻のコレクションに入っていたものだ。

2022年にクリスティーズニューヨークでバス・コレクションのセールが開催されたとき、この《睡蓮》の落札額は5650万ドル(約90億4000万円)と、今回の予想価格をかなり上回るレベルだった。同コレクションを所有していたシド・リチャードソン・バスは石油産業で財を成し、後にディズニーの主要株主となった人物で、1990年から92年にUS版ARTnewsの「トップ200コレクター」リストに選ばれている。慈善家で社交界の名士だった妻のアンもまたコレクターで、1990年から94年にかけて同リストにランクインした。

クロード・モネ《睡蓮》(1907) Photo: Sotheby’s

高さ約94cmの《睡蓮》(1907)は、これまで2回しか一般公開されたことがない。最初の展示は1909年のパリのデュラン=リュエル画廊、2回目は2010年のニューヨークでの公開だった。1909年に展示されたとき、作家で美術史家のジャン=ルイ・ヴォードワイエは、「この作品で、絵画はかつてないほど音楽や詩に近づいた」と記している。

モネのオークション最高額は、2019年にサザビーズ・ニューヨークで樹立した《積みわら》(1890)の1億1070万ドル(約177億1000万円)で、印象派絵画の記録を塗り替えた。それに次ぐ2番目の記録を2018年に打ち立てたのは、ロックフェラー夫妻が所蔵していた《Nymphéas en fleur(花ざかりの睡蓮)》だ。これも、その名の通り睡蓮を描いたもので、やはりほぼ正方形のカンバスが使われている。落札価格は8470万ドル(約135億5000万円)だった。

なお、2008年以降、オークションで5000万ドル(約80億円)を超えたモネ作品は14点あり、うち9点は睡蓮の絵で占められている。サザビーズでヨーロッパ地区チェアマン兼印象派・近代美術部門グローバルチェアマンを務めるヘレナ・ニューマンは、US版ARTnewsにこう語っている。

「これは、1904年から09年に正方形のカンバスを用いて制作された、モネの代表的な睡蓮シリーズの中でも最も脂が乗った時期の作品です。彼は池の水面をまっすぐに見据え、空を映し出す水そのものに焦点を当てています。岸辺を描かないことで作品が純粋な抽象画の域に近づき、その色彩は実に華やかです。色彩の多様性という点で、期待できるあらゆる要素が詰まっていると言えるでしょう」

クロード・モネ《Camille assise sur la plage à Trouville》(1870-71) Photo: Sotheby’s

一方、妻のカミーユを描いた作品は、これまでイギリス国内では展示も販売もされたことがない。サザビーズの調査によると、モネが妻を描いた絵画でオークションに出品されたことがあるのは、今回の出品作以外には1点のみだという。高さ約46cmの《Camille assise sur la plage à Trouville》は、2000年にサザビーズで230万ドル(約3億7000万円)で落札され、2018年にクリスティーズで行われたロックフェラー夫妻コレクションの歴史的なセールでの落札額は1210万ドル(約19億4000万円)だった。

このときロックフェラー・コレクションは完売で、総売上高は6億4610万ドル(約1034億円)に達した。これは事前の予想額4億9000万ドル(784億円)をはるかに上回り、単一所有者による単一セッションのオークションで長年保持されてきた記録を塗り替えている。

カミーユの絵についてサザビーズのニューマンは、「まるで美術館に所蔵されているような作品です」と称賛するが、その評価に偽りはない。実際、同じ浜辺で妻を描いた他の作品は、パリのマルモッタン・モネ美術館ロンドン・ナショナル・ギャラリー、イェール大学美術館に所蔵されている。ニューマンはこう続けた。

「この作品は、有名な《印象、日の出》(1872)の直前に描かれています。普仏戦争の時期ですが、まるで世の中に心配事など何もないかのような雰囲気で、カミーユはお洒落を極めたパリジェンヌのように見えます。モネのキャリアにおける重要な時期を代表するこの2作品の出品を所有者が決めたことは、市場に対する、そして世界的なオークション開催地としてのロンドンに対する信頼の証です」(翻訳:石井佳子)

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