十和田市現代美術館のロン・ミュエク作品が「特別住民」に。美術館収蔵作品として初の事例

十和田市現代美術館で開館以来18年にわたり親しまれてきた、高さ4メートル超のロン・ミュエク作品《スタンディング・ウーマン》(2007)が十和田市の特別住民として登録されると発表された。9月11日には同館で特別住民票の授与式が行われる。

ロン・ミュエク《スタンディング・ウーマン》(2007)撮影:⼩⼭⽥邦哉 Courtesy Anthony dʼOffay, London

青森県十和田市は、十和田市現代美術館に常設展示されているロン・ミュエクの《スタンディング・ウーマン》(2007)を、市の特別住民として登録すると発表した。

特別住民とは、自治体が地域の歴力や文化、風土、環境、産業、観光、教育などの魅力を発信し、地域への関心や愛着を高める目的で、住民ではない人物や動物、架空のキャラクターなどを住民に見立てて登録するものだ。過去には、秋田犬の「わさお」(2009年、青森県鰺ヶ沢町)や「鉄腕アトム」(2003年、埼玉県新座市)、「ドラえもん」(2012年、神奈川県川崎市)などが登録されている。《スタンディング・ウーマン》が登録されれば、美術館収蔵作品として初の事例となる。

十和田市ではすでに、観光PRキャラクターの「駒松くん」「駒桜ちゃん」「南そボーヤ」と、産品PRキャラクターの「十和田にんにん」「十和田ねばっち」「十和田ねぎん」「十和田ごんぼう」が特別住民となっている。

《スタンディング・ウーマン》は、ロンドンを拠点に活動する現代美術家ロン・ミュエクが2007年に制作した、高さ4メートルを超える高齢女性の彫刻だ。皮膚のしわやたるみ、透けて見える血管、髪の毛の一本一本まで克明に再現されている。

十和田市は、同作を特別住民として迎える理由について、プレスリリースで次のように説明している。

「《スタンディング・ウーマン》は、平成20年の開館以来18年にわたり十和田の地に立ち続け、美術館を象徴する作品として市民や来館者に親しまれてきました。本企画は、長年にわたりまちとともに歩んできた作品を、鑑賞の対象というだけではなく、住民の一人として捉え直す取り組みです。作品を住民として迎えることで、アートがまちに根付き、人々とともに時間を重ねてきた十和田市ならではの文化を広く伝えていきます。令和10年には美術館が開館20周年を迎えることから、本企画はその節目に向けた歩みの一つでもあります」

9月11日には同館で特別住民票の授与式が行われる。当日はミュエクから寄せられたメッセージも紹介され、記念の特別住民票は今後、美術館のイベントなどで一般来館者に配布される予定だ。なお、ミュエクの作品11点を紹介する個展「ロン・ミュエク」は、9月23日まで東京・森美術館で開催されている。

特別住民票は、各自治体が独自の目的や基準に基づいて発行する記念文書で、住民基本台帳法に基づく通常の住民票とは異なり、法的な効力はない。地域振興の仕掛けとして活用される一方、「誰かを住民として迎える」行為は、裏返せば「誰が住民として扱われていないのか」を浮かび上がらせることもある。

2003年、横浜市西区は、帷子川に現れて人気を集めていたアゴヒゲアザラシの「タマちゃん」に特別住民票を交付した。これに対し、当時、日本で暮らして納税しながらも住民基本台帳に登録されず、外国人登録制度のもとで別に管理されていた外国籍住民の一部が、制度の矛盾を訴えて抗議活動を行った。なお、2012年に外国人登録制度は廃止され、現在は一定の在留資格を持つ外国人も住民基本台帳に登録されている。

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