オアシス・ギャラガー兄弟の親密さを描いたエリザベス・ペイトン作品に「盗用」疑惑──写真家が提訴
不仲で知られるオアシスのリアムとノエル・ギャラガー兄弟の親密な一瞬を捉えた写真家が、エリザベス・ペイトンを著作権侵害で提訴した。5月にサザビーズで約3億円で落札されたペイトンの絵画は、写真を意図的に模倣したものだと主張している。

8月20日、ロック写真家のジャスティン・トーマスが、アメリカ人画家のエリザベス・ペイトン、サザビーズ、およびペイトンの所属ギャラリーであるデイヴィッド・ツヴィルナーを相手取り、ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所に著作権侵害訴訟を提起した。著作権や知的財産に関するニュースや裁判事例などを扱うメディア、Copyright Lately(コピーライト・レートリー)が第一報を報じている。
訴状の中で原告のトーマスは、1995年にロンドンのアールズ・コートで開かれたコンサートの打ち上げパーティーで自身が撮影した写真を、ペイトンが意図的に模倣したと訴えた。写真には、オアシスの中心メンバーで、衝突が絶えなかったリアムとノエルのギャラガー兄弟が、めずらしく親愛の情を示して抱き合い、キスをしている姿が捉えられている。
この写真を元に制作されたペイトンの絵画《アールズ・コート(リアム+ノエル)》(1996)は、今年5月にニューヨークのサザビーズで行われたオークションで、192万ドル(最近の為替レートで約3億円、以下同)で落札されている。
裁判所への提出書類で原告は、問題の絵画は「著作権で保護された作品を単に模倣しただけ」で、「あの象徴的な瞬間──ケンカが絶えないことで有名なギャラガー兄弟がキスをする場面──を彼女は模倣している。また、粗野なロックスターが見せた優しさというテーマも模倣している」と主張。「唯一違うのは用いられた表現手段で、ペイトンが著作権で保護された作品をわずかにトリミングし、異なる色使いや筆致を加えたことだけだ」と続け、この絵画は「典型的な二次的利用」だとしている。
原告はまた、ペイトンの代理を務めるメガギャラリーのデイヴィッド・ツヴィルナーが、訴状中で「違法な侵害作品」とされているペイトンの絵画の画像を出版、複製、および頒布することで利益を得たと主張。サザビーズも、当該絵画を150万ドルから200万ドル(約2億4000万〜3億2000万円)の予想落札額で競売にかけ、そこから利益を得たとして訴えられた。
現在スペイン在住のトーマスは、ザ・クラッシュ、プリンス、ザ・ローリング・ストーンズ、イギー・ポップといったパンク、ロック、ブリットポップのアーティストたちを約35年にわたり写真で記録し続けてきた。Hanging Around Books(ハンギング・アラウンド・ブックス)から出版された写真集『How Does It Feel? – Oasis 1995-2002』は、何かと話題の絶えないオアシスのギャラガー兄弟の姿を追ったものだ。
訴状によると、今年4月にサザビーズの担当者がトーマスにコンタクトし、オンラインカタログ(具体的には「ウェブページ上のエッセイにおける比較用図版」)で当該写真のライセンス使用許可を求めた。その際、写真そのものを販売するわけではない旨も説明されたという。当時トーマスは、2000ドル(約32万円)で使用を許可している。
しかし、訴状で引用されている別のメールによると、約1週間後にサザビーズは、アーティストの代理人からの要請を受けて写真をウェブサイトから削除。その後、トーマスとサザビーズは、料金を1500ドル(約24万円)に変更することで合意した。
トーマスの言い分によれば、ライセンス料の500ドル(約8万円)の値引きをめぐってサザビーズと交渉した際、5月のオークションで落札されたペイトンの絵画の元になったのが自身の写真であることに初めて気づいたという。デイヴィッド・ツヴィルナーとサザビーズがオンラインカタログからトーマスの写真を削除したことについて彼は、「絵画の元になったものを隠蔽しようとした」と訴えている。
しかし、写真や映像の専門メディアPetaPixel(ペタピクセル)が報じたように、ペイトンの絵画とこの写真の関連性については以前から広く知られていた。その一例として挙げられているのが、アートアドバイザーのトッド・レヴィンによるインスタグラムへの投稿だ。
レヴィンは、サザビーズのオークションでペイトンの《アールズ・コート(リアム+ノエル)》が約3億円で落札されたとき、作品の写真を投稿して「1998年に1万2000ドル(約190万円)でこの絵を入手したことを覚えている」、「ペイトンの絵画は写真を再現したもので……」と書いていた。
ペイトンは、世界的に高く評価されている現代アーティストの1人で、親しい友人や知り合いのアーティスト、さらにはナポレオン・ボナパルトからカート・コバーンに至る著名人を題材にした親密で具象的なポートレートで知られる。写真を参考にして制作することも多く、自身の作品を「肖像画」というよりは「人々の姿を描いた絵」だと語っている。
また、ペイトンが著作権侵害で訴えられたのは今回が初めてではない。2014年と2016年に、写真家のデニス・モリスが、セックス・ピストルズのメンバーを撮影した自身の写真を彼女が無断で模倣したと主張。最初の訴訟は、ペイトン側がこの申し立てを否定し、代理人を通じてフェアユースを主張した結果、和解に至った。2回目の訴訟はペイトンがジョン・ライドンを描いた《John Lydon, Destroyed》(1994)に関するもので、サザビーズのオークションから出品が取り下げられている。
本件に関するコメントをデイヴィッド・ツヴィルナーとサザビーズに求めたが、記事の公開までに回答は得られなかった。(翻訳:石井佳子)
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