ポップアートの巨匠ロバート・インディアナの旧宅が売却へ。作家が望んだ美術館化を断念

「LOVE」シリーズで知られるポップアートの巨匠ロバート・インディアナ(1928-2018)の財団が、作家の旧宅を売りに出した。旧宅を一般公開のアート施設にするという本人の遺志に反するとの批判もある一方で、財団は売却益を地元の芸術支援に充てるとしている。

代表作「LOVE」シリーズとロバート・インディアナ。Photo: Jack Mitchell/Getty Images

アメリカポップアートを代表する芸術家ロバート・インディアナの功績を後世に伝えるために設立された財団が、メイン州ビナルヘイブン島にある作家の旧宅を売りに出した。インディアナは遺言で、この建物を一般公開のアート施設として活用するよう求めていた。

インディアナが終生愛した歴史的建造物

「O」の文字を傾けた代表作「LOVE」シリーズで知られるインディアナは、1978年にビナルヘイブンへ移住した。島の港を見下ろすランドマーク「スター・オブ・ホープ」は、19世紀後半に建てられ、かつて友愛団体オッド・フェローズのロッジとして使われていた建物だ。インディアナは、2018年に89歳で亡くなるまでの約40年間をここで過ごした。

インディアナは自身の芸術的遺産を守るため、スター・オブ・ホープ財団を設立。死後、同財団が遺産を相続した。

ニューヨーク・タイムズによると、同財団は先週、スター・オブ・ホープを140万ドル(約2億2400万円)で売りに出した。数軒離れた場所にある、インディアナ所有の別の建物も21万ドル(約3360万円)で売却する。

だがインディアナは遺言で、スター・オブ・ホープを「美術館水準」に修復・改装し、自身のコレクションを保存・展示するほか、一般の人々が講座、講演に参加できるアート施設として活用するよう求めていた。

不動産所有よりも作家支援を優先

財団は当初、その構想を実現するため、老朽化した建物の補強や一部改修を進めていた。しかし、不動産の管理から撤退し、メイン州のアーティストや芸術団体を直接支援することが、財団の使命によりかなうと判断したという。

財団のマネージングディレクター、キャロル・マーティンは、ニューヨーク・タイムズに次のように語っている。

「私たちの目的は、これらの不動産を所有することではなく、アーティストを支援することです。物件を売却すれば、その資産を慈善活動のための資金に換え、メイン州のアートコミュニティに直接還元できます」

スター・オブ・ホープ。2018年撮影。Photo: Shawn Patrick Ouellette/Portland Portland Press Herald via Getty Images

一方、この決定には、インディアナの遺志に反するとの批判も上がっている。インディアナの遺産をめぐる訴訟で、遺産管理団体の代理人を務めた法律事務所ヴェナブルのパートナー、ケビン・リプソンは、今回の判断を「ロバート・インディアナが遺言に込めた意図を著しく否定するもの」と批判。さらに、「インディアナはビナルヘイブンに何らかの美術館ができることを望み、そうなるものと考えていた。しかし、どうやらその計画は実現しそうにない」と述べた。

インディアナと面識があったビナルヘイブンの町政責任者、マージョリー・ストラットンも、この決定に疑問を呈している。個人の立場でニューヨーク・タイムズの取材に応じたストラットンによると、インディアナはこの建物を芸術や教育、研究のために活用し、若者が制作に取り組んだり、アートを学んだりできる場所にしたいと語っていたという。

「財団が、彼から直接聞いた願いを実現しようとしていないように見えることが、ただ悲しいのです」

老朽化による修繕費用の発生も売却理由に

インディアナが亡くなった当時、スター・オブ・ホープはひどく傷んでいた。塗装は剝がれ、外壁の下見板は腐食し、雨漏りする屋根には防水シートがかけられていたという。その後、財団は屋根や窓、扉を修理するなど、一部の問題に対処した。しかし、現在の物件情報に掲載された写真では、室内の塗装が剝がれ、柱や木摺がむき出しになるなど、いまなお随所に傷みが見られる。

財団は、建物には依然として構造上および法規制上の問題が残っていると説明。売却は、資金をほかの活動へ振り向けるための現実的な選択だとしている。

マーティンは、「私たちは、何年も空き家になっている建物にどう新たな命を吹き込むかという難題に取り組む、数多くの団体のひとつです」と語る。物件を売却し、地元のアーティストや芸術団体に直接投資することが、「最も誠実な前進の道」だと説明する。

ただし、ビナルヘイブンの住民全員が売却に反対しているわけではない。インディアナと面識があり、町のメインストリートでモーテルとアートギャラリーを経営するエレイン・クロスマンは、改修事業が費用のかさむ泥沼に陥っていたように見えると、ニューヨーク・タイムズに語った。

クロスマンは、新たな所有者が1階の店舗を再開するなど、建物を再び活用してくれることに期待を寄せている。その上でこう続けた。

「これはむしろ、非常に前向きな動きだと思っています。財団が地域で意義ある活動を進められるようになるための、大きな一歩になってほしいです」

from ARTnews

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