今週末に見たいアートイベントTOP5:李禹煥の確立期から現在へ続く「関係」の探究、ヘルナン・バスが描く「価値」のゆらぎ

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

久保寛子 個展「赤土」(GASBON METABOLISM)より、《ミアキス》展示風景 (2026), Courtesy of 久保寛子, 金津創作の森美術館

1. 久保寛子 個展「赤土」(GASBON METABOLISM)

《ミアキス》展示風景 (2026), Courtesy of 久保寛子, 金津創作の森美術館
金津創作の森美術館 外観 (2026)
《ミアキス》展示風景 (2026), Courtesy of 久保寛子, 金津創作の森美術館

土地の記憶と古代文明を繋ぐ、赤土の彫刻

久保寛子は、先史芸術や民族・民俗芸術、文化人類学などのリサーチをもとに、ワイヤーメッシュや農業用シートなど身近な素材を用いて彫刻やインスタレーションを制作してきた。神話や自然の脅威、女性の表象などを題材に、古代から現代までの文化や社会を読み解きながら独自の造形を展開している。近年は「青の太陽 緑の月」(金津創作の森美術館、福井、2026年)や「あいち国際芸術祭2025」などに参加している。

本展は、個展「青の太陽 緑の月」の作品群をもとに、会場周辺の土地へのリサーチと「赤土」をテーマに新たな構成で展開する。久保は初めて会場を訪れた際、諏訪大社や釈迦堂遺跡博物館を訪ね、八ヶ岳山麓に残る先史文化や土着的な信仰に関心を深めたという。さらに、メキシコで出会ったマヤ・アステカ文明の遺物や、現在の拠点である千葉県旭市で採取される赤い粘土「カベト」などとの繋がりを重ね、本展を構想した。会場には大型彫刻やインスタレーションが展開される。

久保寛子 個展「赤土」
会期:6月21日(日)〜10月5日(月)
場所:GASBON METABOLISM(山梨県北杜市明野町浅尾新田12)
時間:11:00~17:00
休館日:火~木


2. 練馬区立美術館コレクション展 若林奮-Run and Rest-|寺田真由美-不在の存在-(練馬区立美術館)

寺田真由美
《white chair 150701pa》
ピグメント・プリント、
102.0×139.0 ㎝、2015 年
若林奮《Run and Rest》鉄、168.0×200.0×609.5cm、1996 年(撮影=山本糾)
寺田真由美《curtain 010401》ゼラチン・シルバー・プリント、50.8×61.0㎝、2001年

美術館で繰り広げる2人の競演

同館に寄贈された作品群を軸に、日本の現代彫刻を代表する若林奮(1936-2003)とニューヨークを拠点に活動する寺田真由美(1958年生)の2人をそれぞれに紹介する。「若林奮-Run and Rest-」では、若林の作品70点を展示。鉄を主な素材に、「自然」「時間」「空間」などをめぐる思索を形にしてきた若林は、1980年と1986年のヴェネチア・ビエンナーレにも参加している。同館には2024年度、彫刻《Run and Rest》(1996)や版画《GRASS》(1993)、ドローイングなどが寄贈された。

「寺田真由美-不在の存在-」では、寄贈された35点を中心に、初期の立体作品から写真、撮影に用いた模型、近年の彫刻までを紹介する。寺田は室内模型を制作して撮影し、実在しない空間を写し出してきた。近年は淡い色彩を取り入れた写真や石彫にも取り組んでいる。さらに同館では、練馬区立美術館と中村橋のまちなかを舞台に「アーツ中村橋2026──わたしとまちの記憶」も開催中。飯田竜太、大小島真木、袴田京太朗ら9組の作品を通して、「わたし」たちと同館がある中村橋の「まち」の過去と現在を繋ぐ。

練馬区立美術館コレクション展 若林奮-Run and Rest-|寺田真由美-不在の存在-
会期:7月25日(土)〜10月18日(日)
場所:練馬区立美術館 企画展示室1・2(東京都練馬区貫井1-36-16)
時間:10:00〜18:00(入場は30分前まで)
休館日:月曜(9月21日、10月12日を除く)9月24日、10月13日

アーツ中村橋2026──わたしとまちの記憶
会期:2026年9月12日(土)〜11月8日(日)※練馬区立美術館内の展示は10月18日まで(飯田竜太、大小島真木、袴田京太朗による美術館内での展示期間は9月12日〜10月18日)


3. 李禹煥:Work on Paper / Sculpture(SCAI THE BATHHOUSE)

李禹煥《無題》1979、紙に鉛筆、28 × 37.5 cm
協力:SCAI THE BATHHOUSE

筆跡と余白、石と鉄。ものの間に働く関係を問う

李禹煥(1936年生)は、1960年代後半から本格的に制作を始め、戦後日本美術の重要な動向「もの派」を理論と実践の両面から牽引してきた。本展では、独自の表現を確立し国際的作家へ飛躍した1970年代から近年までのドローイングと彫刻を通して、素材と素材、作品と空間の関係に着目してきた李の制作を紹介する。同ギャラリーでは4年ぶりの個展となり、ヴェネチア、ニューヨーク、アヴィニョンで開催される展覧会とも連動している。

1970年代後半から80年代初頭のドローイングには、木炭や水彩による反復的な筆跡が残され、《線より》《点より》など同時期の作品との繋がりも見られる。1980年代末以降は筆跡が抑えられ、2000年代以降には、わずかな線と広い余白の関係が際立つ。会場では平面作品に加え、《関係項》シリーズから石と鉄を組み合わせた彫刻3点も展示。異なる素材を並置することで、物質同士の関係と、それを取り巻く空間への意識を示す。

李禹煥:Work on Paper / Sculpture
会期:8月4日(火)〜10月10日(土)
場所:SCAI THE BATHHOUSE (東京都台東区谷中6丁目1−23 柏湯跡 )
時間:12:00〜18:00
休廊日:日月祝


4. ヘルナン・バス TIME TO SHINE!(THE SALESMEN)(ペロタン東京)

展示風景。
展示風景。
展示風景。

ヘルナン・バスが描く「商いの場」

アメリカ・フロリダ州マイアミを拠点に活動するヘルナン・バスの、日本で8年ぶりとなる個展。キューバ移民の家系に生まれ、幼少期を北フロリダの森で過ごした経験や、ビッグフット、UFO、幽霊といった物語への関心が、後の作品におけるゴシック的な想像力につながっている。19世紀末のデカダン派やフランスのナビ派などから影響を受けた具象絵画には、少年期から成人期へ移行するあいだの青年たちが繰り返し登場する。

本展では、欲望やファンタジー、文学、クィア・アイデンティティといったこれまでのテーマを、ヤードセールや生花店、浜辺の土産物売りなど、アメリカ郊外の日常的な「商いの場」を舞台に描く。5.5メートル幅の《All you ever wanted to know about 5B》では、庭先に並ぶ古着や雑貨と人物を組み合わせ、商品とそれを売る人との関係が描かれる。ほかにも、花や貝殻を売る青年たちが登場し、ものや人間に一時的に価値を与えられる瞬間を捉えている。

ヘルナン・バス TIME TO SHINE!(THE SALESMEN)
会期:9月9日(水)〜11月11日(水)
場所:ペロタン東京(東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル1F)
時間:11:00〜19:00
休廊日:日月


5. ラウムラボア・ベルリン展:Water Works—in the Flow of Making(TOTOギャラリー・間)

Floating Univercity(ドイツ、ベルリン2018年)©Pierre Adenis
Deep Encounter(オランダ、アーネム2021年)©raumilabo berlin

「空間実験室」が水辺で試みる、新たな都市の使い方

ラウムラボア・ベルリンは、1999年に結成されたベルリンを拠点とするコレクティブ。建築家、アーティスト、パフォーマー、発明家、キュレーターら9人が建築や都市計画、芸術の領域を横断しながら活動している。既存の都市空間を別の使い方で捉え直し、公共浴場やキッチンなど、人々が身体を動かしながら交流する場をつくってきた。代表作「Floating University」などの活動で、2021年ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展金獅子賞を受賞している。

本展のテーマは、彼らが長年取り組んできた「水」。芝浦工業大学建築学部の学生とともに、豊洲運河を舞台とした2週間のワークショップ「Islands – Performing on Water」を行い、輸送用のダンネージバッグ(コンテナやトラック、船舶内で貨物を固定・安定化するためのエアバッグ型緩衝材)や竹などを使って水上の構造物を制作した。艀の上でパフォーマンス「アメンボ丸」を行うなど、東京湾で実際に水辺と都市の関係を探ったという。会場ではワークショップで使用した資材やその記録に加え、水の循環や彼らが思い描く水辺の世界を紹介。制作の過程そのものを展示へと繋げながら、都市における水辺の使い方を考える。

ラウムラボア・ベルリン展:Water Works—in the Flow of Making
会期:9月10日(木)〜11月29日(日)
場所:TOTOギャラリー・間(東京都港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3F)
時間:11:00〜18:00
休館日:月祝

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