エルネスト・ベルタレリ(Ernesto Bertarelli)
拠点:スイス・グシュタード
職業:バイオテクノロジー、投資家
収集分野:近現代アート
エルネスト・ベルタレリは、人生の大半の時間を仕事に捧げてきた。父の経営する製薬会社セロノでの初仕事は6歳のときで、年間最優秀社員賞を手渡す係だったという。そして、わずか31歳で病に倒れた父の後を継ぎ、セロノのCEOに就任した。それでも、2010年に英フィナンシャル・タイムズ紙に語ったように、ベルタレリはこう考えている。「仕事だけでなく、ほかのことも大切です。いつも机に向かっているわけにはいきません」
ベルタレリの言う「ほかのこと」の1つが、膨大な近現代アートのコレクションだ。TOP 200 COLLECTORSに名を連ねるコレクターの多くがそうであるように、彼も自分のコレクションに関しては多くを語らず、所有作品はほとんど知られていない。もう1つ、彼が情熱を傾けているのがヨットレースで、アメリカズカップで過去2回優勝した世界有数のセーリングチーム、アリンギを所有。同レースの参加には、1回の大会で1億ドル(約146億円)以上という多額の費用がかかるとされている。
「歩き始める前から(ヨットに)夢中になっていたんです」と、彼はフィナンシャル・タイムズ紙のインタビューで語っている。「父が乗っていたので、私たちの夏休みはいつもヨットの上でした。原付自転車に乗るより早く、小さな船を持っていましたよ」。150年以上続くアメリカズカップのトロフィーを初めてヨーロッパにもたらした功績を認められたベルタレリは、2003年にフランスのシラク大統領からレジオンドヌール勲章シュバリエを授与された。
セロノの収益を24億ドル(約3480億円)にまで拡大したベルタレリと妹のドナは、2007年に130億ドル(約1兆9000億円)を超える金額で会社を売却。現在は、海洋保護と研究を目的としたベルタレリ財団の共同代表を務めている。米フォーブス誌によると、2019年10月現在、ベルタレリの純資産は推定81億ドル(約1兆1800億円)とされる。
注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2024年版トップ200コレクターズが発表された2024年10月時点の為替レートによる。