ロサンゼルスのアートシーンがゴールドラッシュ! 過去30年のマーケット拡大を振り返る
第3回フリーズ・ロサンゼルスの開催と時を同じくして、現地で大きな話題になったことがある。他の都市(大半はニューヨーク)を本拠地とするギャラリーが、続々とロサンゼルス進出を明らかにしたのだ。
メガギャラリーのPace(ペース)は、ロサンゼルスの老舗Kayne Griffin(ケイン・グリフィン)と合併し、同ギャラリーをそのまま支店とすると発表。ロンドンとニューヨークを拠点とするLisson Gallery(リッソン・ギャラリー)はシカモア地区に、ニューヨークのダウンタウンに2店舗を展開するThe Hole(ザ・ホール)はラ・ブレア・アベニューに新しいギャラリーの開設を予定している。
また、Sean Kelly(ショーン・ケリー)、David Zwirner(デビッド・ツヴィルナー)のロサンゼルス進出が報じられ。Sargent's Daughters(サージェンツ・ドーターズ)も今夏、メルローズヒルに拠点を構える計画があるなど、さながら現代のゴールドラッシュのような状況だ。
以下、ロサンゼルスのアートシーンが拡大してきたここ数十年の歴史を振り返ってみよう。
1983年
ロサンゼルス現代美術館(MOCA)が開館。パンザ・コレクションから抽象表現主義やポップアートの作品を1100万ドルで購入し、80年代を通して積極的に所蔵作品を増やしている。
1989年
Luhring Augustine Hetzler(ルーリング・オーガスティン・ヘッツラー)
本拠地:ベルリン
当時の支店:なし
現在の店舗:ベルリン、ロンドン(Max Hetzler、マックス・ヘッツラー)、ニューヨーク(Luhring Augustine、ルーリング・オーガスティン)
ロサンゼルスの店舗状況:90年代半ばに閉廊
1994年
Pace Gallery(ペース・ギャラリー)
本拠地:ニューヨーク
当時の支店:なし
現在の店舗:ニューヨーク、ロンドン、ソウル、香港、パロアルト、ジュネーブ
ロサンゼルスの店舗状況:1999年に閉廊。2022年にKayne Griffinと合併し、新たに拠点をオープン予定。
1995年
Gagosian(ガゴシアン)
本拠地(当時):ニューヨーク
当時の支店:なし
現在の店舗:ロンドン、パリ、ジュネーブ、香港など多数
ロサンゼルスの店舗状況:現在も営業中で、最近拡張を行った。創業者のラリー・ガゴシアンはロサンゼルス育ち。1974年に最初のギャラリーを地元で開いた後、ニューヨークに進出。そこを足掛かりに、他に類を見ない世界展開を開始した。ニューヨークの次にギャラリーをオープンしたのは、2000年のロンドン。
1997年
13億ドルの費用をかけたゲティ・センター(J・ポール・ゲティ美術館)がオープン。
2008年
ロサンゼルス・カウンティ美術館(LACMA)に、5000万ドルをかけたBroad Contemporary Art Museum(ブロード現代美術館)がオープン。大物コレクターでロサンゼルスのアート&カルチャー界の中心的人物、イーライ・ブロードが資金を提供した。
2010年
ロサンゼルス・カウンティ美術館(LACMA)に、約4200平方メートルのLynda and Stewart Resnick Exhibition Pavilion(リンダ・アンド・スチュアート・レズニック・ エキシビション・パビリオン)がオープン。
L&M(エル・アンド・エム)
本拠地:ニューヨーク
当時の支店:なし
ロサンゼルスの店舗状況:2013年に閉廊。その後、ギャラリーの共同経営者だったロバート・ムニューシンとドミニク・レヴィは、個別にギャラリーを立ち上げている。
2011年
ゲティ財団が、カリフォルニアのアートシーンに焦点を当てたプロジェクト、「Pacific Standard Time(パシフィック・スタンダード・タイム)」をスタート。影響力のあるこの取り組みの第一弾が開催された。
2012年
Matthew Marks(マシュー・マークス)
本拠地:ニューヨーク
当時の支店:なし
現在の店舗:ニューヨーク、ロサンゼルス
ロサンゼルスの店舗状況:現在も営業中
2014年
Gavlak(ガブラック)
本拠地:フロリダ州パームビーチ
当時の支店:なし
現在の店舗:フロリダ州パームビーチ、ロサンゼルス
ロサンゼルスの店舗状況:現在も営業中
2015年
1億4000万ドルをかけたイーライ・ブロードの私設美術館、The Broad(ザ・ブロード)がロサンゼルス現代美術館(MOCA)の向かいにオープン。
Hauser & Wirth(ハウザー&ワース)
本拠地:チューリヒ
当時の支店:ニューヨーク、ロンドンを含む6店舗
現在の店舗:香港、モナコ、スペインのメノルカ島など多数
ロサンゼルスの店舗状況:現在も営業中。2店舗目をオープンする計画を2021年に発表した。
Sprüth Magers(シュプルース・マーガー)
本拠地:ベルリン
当時の支店:ベルリン、ロンドン
現在の店舗:ベルリン、ロンドン、ロサンゼルス
ロサンゼルスの店舗状況:現在も営業中
2017年
Praz-Delavallade(プラッツ=デラバレード)
本拠地:パリ
当時の支店:なし
現在の店舗:パリ、ロサンゼルス
ロサンゼルスの店舗状況:現在も営業中
2018年
Tanya Bonakdar Gallery(ターニャ・ボナクダー・ギャラリー)
本拠地:ニューヨーク
当時の支店:なし
現在の店舗:ニューヨーク、ロサンゼルス
ロサンゼルスの店舗状況:現在も営業中
2019年
フリーズがロサンゼルスでアートフェアを開始。
2021年
Friedman Benda(フリードマン・ベンダ)
本拠地:ニューヨーク
当時の支店:なし
現在の店舗:ニューヨーク、ロサンゼルス
ロサンゼルスの店舗状況:現在も営業中
(翻訳:野澤朋代)
※本記事は、米国版ARTnewsに2022年2月17日に掲載されました。元記事はこちら。