デヴィッド・ブース(David Booth)

拠点:アメリカ・テキサス州オースティン
職業:投資顧問(ディメンショナル・ファンド・アドバイザーズ)
収集分野:現代アート

デヴィッド・ブースは、オフィスにアートを置くのが好きだという。2013年にニューヨーク・タイムズ紙が取材に訪れたとき、ブースはアメリカの抽象画家フレデリック・ハマーズリーの作品を眺めながら、「(アートは)自分をやり手に見せてくれる」と語っている。

テキサス州で投資の仕事をしてきたブースは、学術理論を応用した投資手法だけでなく、長年にわたる活発なアート収集や慈善活動で高く評価されている。1981年に共同設立した投資顧問会社は、現在5000億ドル(約73兆円)以上の資産を運用し、米フォーブス誌の推定するブースの純資産は約16億ドル(約2300億円)にのぼる。2018年には、ビル・ゲイツとウォーレン・バフェットが2010年に共同設立した「ギビング・プレッジ(*1)」に署名し、資産の半分以上をさまざまな慈善団体に寄付することを発表。また、2008年にシカゴ大学へ寄付した3億ドル(約435億円)は、同大学史上最大の寄付額として注目された。


*1 保有する資産の過半を、生前または死後に慈善活動に寄付することを誓約する慈善活動。

ブースが、元妻でトップ200コレクターズの1人でもあるスザンヌ・ディール・ブースとともに購入した著名な作品には、ゲルハルト・リヒターの《Abstraktes Bild 757》(1992)やデイヴィッド・ホックニーの《Steep Valley, Kirkby Underdale, 13, July, 2006》(2006)といった絵画、アニッシュ・カプーアの無題の彫刻(2001)などがある。離婚にあたってコレクションをどう分けたかは公表されていないが、その後もそれぞれ新しい作品の収集を続けている。

ブースは美術品の保存活動にも積極的に関わり、1998年には個々の美術品から史跡全体までを幅広く手がける保存対策委員会「Friends of Heritage Preservation」を立ち上げた。また、2002年にはローマのアメリカンアカデミーに史跡保護を目的としたブース・ファミリー・ローマ賞フェローシップを設立し、毎年奨励金を授与している。2018年にスタートしたニューヨーク近代美術館のコンサベーション・フェローシップ・イニシアチブも、デヴィッド・ブース・コンサベーション・センター基金によって実現されたものだ。


注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2022年版トップ200コレクターズが発表された2022年10月時点の為替レートによる。