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エドゥアール・カルミニャック(Edouard Carmignac)

拠点:フランス・パリ
職業:資産運用
収集分野:現代アート

2019年1月に資金運用会社の経営から退いたエドゥアール・カルミニャックは、翌年カルミニャック財団を設立し、現代アートのコレクションおよび助成金や賞の授与によるアーティスト支援を行っている。2009年から始まったフォトジャーナリズムの年間賞も、同財団が創設した賞の1つだ。

カルミニャックがアートの世界に足を踏み入れたのは30代後半で、1984年にニューヨークのアンディ・ウォーホルのスタジオ、ファクトリーを訪れている。そこで当時最も注目されていたジャン=ミシェル・バスキアに出会い、バスキアはカルミニャックの肖像画を制作することになった。カルミニャック財団のウェブサイトによると、この肖像画の下部に描かれた円の中の小さなCは、1989年にカルミニャックが設立した会社のコーポレートロゴのデザインに反映されているという。

カルミニャックの会社のオフィスに飾られた財団の所蔵品には、ウォーホルやバスキア、ゲルハルト・リヒターなど、アメリカやドイツの戦後美術が多い。リヒターを初めて購入したのは1993年で、抽象画の《Grüner Strich》(1982)だった。「社内にアート作品があることで、理想的な職場環境を作ることができる」とカルミニャックは言い、社員が作品を鑑賞しているのを見るのは嬉しいと語っている。

2018年のアートニュースペーパー紙によるインタビューでは、アートが見る者に「エネルギーを与え、感情を揺さぶる」ことで引き起こされる「強い衝動」が自分のコレクションにつながっていると説明。最初に手に入れた作品は、マックス・エルンストのリトグラフで、「不思議の国のアリス」の一場面を描いたものだったという。その後彼は、ウォーホル、バスキア、ロイ・リキテンスタイン、キース・ヘリングなどの作品を次々と購入していった。

現在、約300点あるコレクションには、ジョン・バルデッサリ、アレクサンダー・カルダー、マウリツィオ・カテラン、ウルス・フィッシャー、ダグラス・ゴードン、キース・ヘリング、ジャン・ホァン、ジェフ・クーンズ、ロイ・リキテンスタイン、シリン・ネシャット、エド・ルシェなど錚々たる名前が並ぶ。所蔵品を増やすにあたり、財団では「好きなものを買う」「タブーに縛られない」「制約を設けない」「買ったものは売らない」という4つのルールを定めている。

2018年、カルミニャック財団は、コートダジュール沖の地中海に浮かぶポルクロール島に現代アートの美術館を開設。また、カルミニャックはポロ競技の選手としても活躍しており、2011年には彼のチームが栄えあるクイーンズカップで優勝を果たしている。

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