ロシア資本のオークション会社フィリップス、経済制裁はビジネスに影響しないと明言
ロシア軍のウクライナ侵攻で戦闘が続く中、ロシア政府とつながりのあるオリガルヒ(新興財閥)に大規模な経済制裁が課されている。
各分野のビジネスにどの程度の影響が及ぶかは不透明だが、ロシアの高級品小売り大手マーキュリー・グループ傘下のオークションハウス、フィリップスは、制裁による経営への影響はないとしている。
モスクワに本拠を置くマーキュリー・グループは、レオニード・フリドリアンとレオニード・ストルニンが所有するロシア最大の高級品小売企業。モスクワの百貨店ツム(Tsum)をはじめ、全国に高級品店を展開している。同グループは、2008年にサイモン・ド・ピュリーから推定6000万ドルでフィリップスを買収して以来、このオークションハウスを所有している。株式譲渡によってこの大規模買収が行われた当時、ロシアはアートマーケットの新興勢力として台頭してきていた。
フリドリアンとストルニンは、米英による資産凍結の対象にはなっていない。だが、制裁対象ではなくても、今後何らかの困難に直面する可能性はある。それでもフィリップスは、ロシアとウクライナの戦争で財政難に陥るとは考えていないと言う。同社の広報担当者は、「最近の制裁が当社のビジネスに影響を与えるとは考えていない」とし、フィリップスは「制裁対象となっている個人や組織とは取引を行っていない」と述べた。
英国は、ロシアの5つの銀行とプーチン大統領に近いオリガルヒへの制裁を発表している。その対象には、投資会社ヴォルガ・グループのオーナーでもあるエネルギー王のゲンナジー・ティムチェンコが含まれているが、ティムチェンコは、ロシアの芸術や文化を海外に発信する活動も行っている。また、2020年に法的な認可を回避して美術品を購入したことで捜査対象となった建設・インフラ業界の大物、ボリス・ローテンベルクとイーゴリ・ローテンベルクも今回の制裁対象になっている。
米国財務省外国資産管理局は2月24日付の声明で、ロシアの二大銀行、スベルバンクとVTB銀行を制裁対象に加えるとしている。同省はまた、「ロシア経済と金融システムに即時的および長期的影響を与え、厳しい経済的コストを課す」この措置は、「ロシアを世界の金融と商業から孤立させる」と述べている。大統領令に基づく制裁措置では、ロシア国内の全銀行資産のおよそ80%が対象になる。
フィリップスのスティーブン・ブルックスCEOは、ARTnewsの取材に対し次のように回答した。「フィリップスは、ウクライナへの侵攻をはっきりと非難する。他のアート界関係者と同様、この地域で展開されている悲劇的な出来事に衝撃を受け、悲しんでいる。全ての敵対行為の即時停止を断固として求める」(翻訳:野澤朋代)
※本記事は、米国版ARTnewsに2022年2月28日に掲載されました。元記事はこちら。