ARTnewsJAPAN

ウクライナのアート関係者とロシアの反体制アーティストに、フランスが100万ユーロの緊急支援基金設立

フランス政府は、ロシアの侵攻によりウクライナを追われたアーティストやアート関係者のために、100万ユーロ(約1億3000万円)の救援基金を設けると発表。フランス文化省の声明によると、言論弾圧が進むロシアから逃れてきた「反体制的」ロシア人アーティストも支援の対象となるという。

Photo: Wikimedia Commons

同省の声明文には次のように記されている。「緊急受け入れプログラムでは、ウクライナ人アーティストやアート関係者およびその家族を3カ月間支援する。これは、文化省管轄下の公共施設が住居を提供するポーズ(Pause)プログラムと、シテ・アンテルナショナル・デザール(Cité internationale des arts、パリのアーティスト・イン・レジデンス施設)を通じて行われる」

また、ウクライナ語とロシア語による緊急電話受付サービスの設置に約75万ユーロ(約9800万円)が充てられる。同サービスは、国を追われたアーティストが移住先で頼れる専門家や制作スペースの紹介などで支援を行うAgency of Artists in Exile(亡命アーティストのための仲介所)のネットワークと共同で運営される。

「このサービスによって、簡単かつ迅速に対象者への案内を行うことができる」と同省は述べている。さらに30万ユーロ(約4000万円)が、フランスの大学や文化団体によるウクライナ人学生受け入れに投入される。

同省の声明によれば、ロズリーヌ・バシュロ=ナルカン文化大臣は、「ウクライナのアーティストがフランスで創作活動を継続できるよう支援をしたい」と望んでおり、「この追加支援は、研究助成金やアートプロジェクトの資金としてだけでなく、展覧会の開催費用としても利用できる」という。

ロシアによるウクライナ侵攻は、欧州に第二次世界大戦以来最大の人道的危機を引き起こしている。国連の難民機関によると、3月上旬時点で少なくとも260万人のウクライナ人が祖国を追われ、近隣諸国に逃れている。ロシアによるウクライナ都市部への砲撃が強まるにつれ、その数は600万人に上るだろうと同機関は推定している。ジェラルド・ダルマナン内相によると、フランス政府は約10万人のウクライナ人難民を受け入れるとしている。(翻訳:野澤朋代)

※本記事は、米国版ARTnewsに2022年3月16日に掲載されました。元記事はこちら

あわせて読みたい