藤倉麻子は、主に3DCGによる映像作品やAR(拡張現実)技術を駆使した制作活動で注目を集める。初期の作品《群生地放送》は、仮想の都市で高速道路や街灯、工業製品などのモチーフが、生き物あるいは亡霊のように動きだす不思議な映像作品。イメージの源泉は、幼少期に育った都市近郊の、平らな土地に巨大な高速道路やショッピングモールが立つ光景にあるという。実空間での試みも面白い。2021年の個展「Paradise for Free」では、3DCGの映像をプロジェクションで上映するギャラリー内に、映像に出てくる一部のオブジェクトを抜き出し立体物として制作し配置。実在と仮想の関係性を揺さぶった。同年のグループ展「CULTURE GATE to JAPAN」で発表したのは、過去の映像作品に登場したピンクの庭の岩。作品に貼られたQRコードから仮想空間につながる仕組みで、新しい風景展示のあり方を示した。