パトリシア・フェルプス・デ・シスネロス、グスタボ・A・シスネロス(Patricia Phelps de Cisneros and Gustavo A. Cisneros)
拠点:ベネズエラ・カラカス、スペイン・マドリード、アメリカ・ニューヨーク
職業:メディア、エンターテインメント、デジタル広告、衛星通信、高級不動産
収集分野:ラテンアメリカの近現代アート、19世紀にラテンアメリカを旅したアーティストの作品、17-19世紀のイスパノアメリカ美術品・オブジェ、アマゾンの民族誌学関連品
国際的な企業グループのオーナー、パトリシア・フェルプス・デ・シスネロスとグスタボ・A・シスネロスは1970年からコレクションを始め、1990年以降は毎年トップ200コレクターズに選出されている。所蔵作家は、リジア・クラーク、ゲゴ、ラウル・ロッツァ、ヘリオ・オイティシカ、ヘスス・ラファエル・ソト、ロド・ロスファスなど、ラテンアメリカを代表するアーティストたちだ。
ニューヨークとカラカスを拠点に活動する夫妻は、ラテンアメリカの教育支援や国際的な奨学金プログラムを行う財団「コレクション・パトリシア・フェルプス・デ・シスネロス 」を設立。20世紀のラテンアメリカ美術がヨーロッパの美術と同等の扱いを受けられるよう、その地位向上を目指して展示活動を続けている。同財団はこうした展覧会の監修のほか、関連書籍の発行も手がけている。
シスネロスが初めて購入したのは、スペインのアーティスト、マヌエル・リベラの《Tiritaña》。これは、細かいメッシュ状の金属を幾何学的に組み合わせた抽象作品だ。その後にコレクションした作品も、ラテンアメリカの抽象作品が多い。2017年、夫妻はニューヨーク近代美術館(MoMA)に102点の作品を寄贈し、ラテンアメリカ美術の研究機関を同館に設立すると発表した。また、ブラントン美術館、デンバー美術館、ボストン美術館、ヒスパニック・ソサエティ博物館・図書館、リマ美術館にラテンアメリカ植民地時代の美術品119点を寄贈。その作品を展示する巡回展が開催された。
さらに2018年、夫妻の財団は202点の作品を6つの美術館に寄贈することを発表。そのうち88点はMoMAに贈られた。MoMAは大規模な増改築を終えた2019年10月のリニューアルオープンにあたり、「Sur modern: Journeys of Abstraction」を開催。シスネロス夫妻からの寄贈品を数多く活用した同展では、1950年代から60年代にかけてブラジル、ベネズエラ、アルゼンチン、ウルグアイで制作された抽象・具象美術に焦点が当てられていた。