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レンブラントの名画《夜警》の修復風景を公開! オランダで史上最大の調査・保存作戦が進行中

アムステルダム国立美術館の至宝、レンブラントの《夜警》(1642)が生まれ変わろうとしている。同作の調査修復を行う史上最大のプロジェクトの第2段階、修復作業が始まった。

レンブラント《夜警》を修復するスタッフたち。Photo: courtesy Rijksmuseum

アムステルダム国立美術館では、所蔵するレンブラント《夜警》(1642)の調査修復を行う一大プロジェクト「夜警作戦」が進行中だ。このほど、その第2段階となる修復作業が始まった。

一般的に、美術館での修復作業は非公開となる。だが今回は特別に、同館で《夜警》を展示している「Gallery of Honor」に、縦3メートル63センチ×横4メートル37センチという巨大な作品に合わせたガラス張りの修復室を設け、その中の様子を観客はいつでも見ることができるようにした。

11月12日、アムステルダム国立美術館の修復家8人からなるチームが、1975年から76年にかけて行われた直近の修復の際に《夜警》の表面に塗られたワニスを除去する作業を始めた。同館が公開した動画で修復チームは、「何年にもわたる入念な調査を経て、私たちは《夜警》のニスと塗料の層を処理するための綿密な計画を立てました」と語っている。彼らはその結果、ワニス除去のための特別な方法を編み出した。一定量のソルベントを不織布に含ませて、1分間だけ表面に置くことで、絵画に激しい刺激を与えず自然に取り除くことが出来るという。それでも残ったワニスは顕微鏡を使い、綿棒などで除去していく。

修復中の《夜警》は、「非常に灰色がかってくすんだ」色に見えるが、新しいニスを塗ると本来の輝きを取り戻すだろうと彼らは言った。と同時に、「将来にわたって作品を最適に保存することができる」と、美術館は声明で述べている。同館の総監督であるタコ・ディビッツは、「修復作業の開始はワクワクするものです。ニスを剥がすことで、《夜警》の波乱に満ちた歴史が明らかになります。一般市民がこのプロセスを間近で追うのは、非常に貴重な体験となるでしょう」と語った。

夜警作戦は2019年、オランダ文化遺産庁(RCE)、デルフト工科大学(TU Delft)、アムステルダム大学医療センター(AUMC)、ワシントンD.C.のナショナル・ギャラリー・オブ・アートなど複数の機関の協力のもとで始まった。第1弾は同年の7月から実施され、オランダのアムステルダム大学(UvA)の化学者たちは、レンブラントが金を使用せずにどうやって絵画に「金色」を表現したのかを解明した。同作には、主人公の1人であるウィレム・ファン・ロイテンブルフ中尉が着用している刺繍のバッファローコートとダブルスリーブなど、まるで金の糸が織り込まれているように描かれている。

彼らは、作品に硫化砒素を含んだパラレアルガー(黄色)と、半アモルファスパラレアルガー(オレンジ・赤)を原料とした顔料が使われていることを、蛍光X線(MA-XRF)スキャンなど、ハイテク分光技術を用いて突き止めた。研究チームは、レンブラントが意図的にそういった顔料と他の顔料と混ぜ合わせることで、黄金の輝きを創り出したと結論づけた。この研究は、UvAのファン・ト・ホフ分子科学研究所の博士課程学生であるFréderique BroersとNouchka de Keyser、および国立博物館の研究員によって、査読付き学術誌『Heritage Science』で発表された。(翻訳:編集部)

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