ARTnewsJAPAN

アート・バーゼル、パリで初開催のアートフェア名は「Paris+」。首脳陣3人も発表

フランス有数の近現代アートフェアFIACからパリの展覧会場グラン・パレの使用権を奪ったアート・バーゼルが、今年10月に初めて開催されるフェアの名称と運営組織を発表した。

パリを象徴する展覧会場、グラン・パレの改修中に使用するため仮設されたグラン・パレ・エフェメール。エッフェル塔の真向かいにある AP Photo/Francois Mori
パリを象徴する展覧会場、グラン・パレの改修中に使用するため仮設されたグラン・パレ・エフェメール。エッフェル塔の真向かいにある 写真:AP/アフロ

フェアの正式名称は「Paris+, par Art Basel(アート・バーゼルによるパリ+)」。主催者発表によれば、「文化の中心地としてのパリを称えるとともに、ファッション、デザイン、映画、音楽といった文化産業間のダイナミックな交流に焦点を当て、パリ全体を輝かせる旗艦イベントを創造するアート・バーゼルの意欲を反映した」という。

Paris+を率いるのは、いずれもフランスのアート界に深い関わりを持つ3人だ。フェア名称とあわせ、クレマン・ドゥレピーヌ(ディレクター)、ヴィルジニー・オベール(ゼネラル・マネージャー)、マキシム・ハーディケン(副ディレクター)の名前が発表されている。

パリの象徴的な展覧会場であるグラン・パレの使用権は、公開入札による激しい競争の結果、アート・バーゼルが落札したことが今年1月に明らかになった。アート・バーゼルは今後7年間で1060万ユーロ(1200万ドル)の負担を約束し、1974年から毎年10月にフェアを続けてきたFIACから会場を奪い取った形となっている。この時アート・バーゼルは、フランスのアート界に向け、パリのフェア名称はアート・バーゼル・マイアミ・ビーチやアート・バーゼル香港の前例には倣わず、「アート・バーゼル・パリ」にはならないと明言していた。

FIACがアート・バーゼルに敗れた約1週間後、長年FIACのディレクターを務めてきたジェニファー・フレイが退任。後任には、FIACの姉妹フェアであるパリフォトを運営してきたフローレンス・ブルジョワが指名された。ブルジョワは引き続きパリフォトのディレクターも務める。フレイは、アート・バーゼルによるパリの新規フェアのディレクターに就任するのではないかと噂されていたが、2023年3月からParis+のアドバイザリーボード会長として参加する予定だ。

Paris+のディレクターに指名されたドゥレピーヌは、現在パリのギャルリー・ミッテランのアーティスティック・ディレクターを務めている。これまで、若手ギャラリーや新進アーティストに特化したFIACのサテライトフェア、パリ・インターナショナルの共同ディレクターを務め、また、ニューヨークのスイス・インスティチュートやボルトラミ・ギャラリーでも上級職を歴任している。

ドゥレピーヌは、声明の中で次のように述べている。「今回指名される前から、アート・バーゼルがパリで新しいフェアを開催するというニュースを歓迎していた。最高の水準を追求しているアート・バーゼルのチームから信頼を託されたことに、多大な栄誉を感じると同時に恐れ多い気持ちを抱いている。ここパリのギャラリー、美術館・博物館、クリエイティブ・文化産業のエコシステム全体と協力し、パリと世界を魅了するイベントを作り上げることを楽しみにしている」

ゼネラル・マネージャーに就任するオベールは、クリスティーズ・フランスの副社長で、2004年に同社に入社して以来、ビジネス・ディレクター、ゼネラル・マネージャーを歴任している。副ディレクターとなるハーディケンは、約10年間FIACの副ディレクターを務めていた。以前は自分のギャラリーの設立・運営を行い、パリ市立近代美術館の学芸員アシスタントだったこともある経歴の持ち主だ。

Paris+の選考委員は7人で、フランスを代表する三つのギャラリーからの代表が含まれている。エール・ド・パリのフローレンス・ボネフォー、ギャルリー・シャンタル・クルーゼルのニクラス・スベンヌン、ギャルリー・ジョルジュ=フィリップ&ナタリー・バロワのジョルジュ=フィリップ・バロワだ。

国外のギャラリーからは、アムステルダムのエレン・デ・ブライネ、ニューヨークのアントン・カーンとクリストフ・ファン・デ・ウェゲ、そして、ケルン、ベルリン、ニューヨークに拠点を持つギャルリー・ブッフホルツのダニエル・ブッフホルツの4人が参加する。

Paris+のメインセクションの出展者はこの7人が選考を行うが、新進気鋭のギャラリーによるエマージング部門は、マルセル・アリックス(パリ)のイザベル・アルフォンシ、ノイエ・アルテ・ブリュッケ(フランクフルト)のマーク・ディケンソン、シモーン・スバル(ニューヨーク)のシモーヌ・スバルが選考を担当する。

アート・バーゼルのグローバルディレクター、マーク・シュピーグラーは声明で次のように述べている。「パリの新しいフェアの運営に、このような強力なチームを迎えることができたのは非常に喜ばしいことだ。幅広い経験と視点を持つ人材により、パリの文化都市としての比類なき伝統と、現代文化の交流の場という魅力を生かし、最高のフェアを披露できると確信している」(翻訳:清水玲奈)

※本記事は、米国版ARTnewsに2022年3月24日に掲載されました。元記事はこちら

あわせて読みたい