謎の民の王女を葬った石棺も。総額13億円相当の盗掘品をイタリア当局が押収
古代ローマが勃興する以前、イタリア半島で独自の文化を発達させたエトルリア人。その埋葬地で盗掘された遺物がイタリア当局に押収された。遺物の価値は総額800万ユーロ(約13億円)にのぼるとされる。
11月19日、エトルリア人の埋葬地から盗掘された遺物を当局が押収したと、イタリアの文化相が発表した。不法な発掘が行われたのはイタリア中部ウンブリア州で、差し押さえられた壷や石棺などは総額800万ユーロ(約13億円)相当と見られる。警察は現在、闇市場で売り捌く目的で盗掘を行った疑いのある2人の捜索を行っている。
AP通信の報道では、盗掘が行われたのは、ある農家が2015年に自分の土地で発掘したエトルリア人埋葬地に隣接する場所とされる。当局の声明によると、密売人が流した遺物と発掘作業の写真を見た人物からの密告があり、写真に写っていたものが農家の敷地内で見つかった遺物に似ていたことが手がかりとなった。
捜査当局は航空写真と電話盗聴を用いて、盗掘が行われていたのが同地の実業家が所有する土地であることを突き止めたという。その実業家は大規模な掘削が可能な機材を所有していた。
盗掘品の中には、エトルリアの王女がそれぞれ納められていたと思われる石棺が2つあり、片方には遺骨と埋葬用の装束のほか、装飾が施された壷、香水入れ、骨を削って作られた櫛など、死後の世界のための副葬品が残されていた。
エトルリア文明は紀元前8世紀から紀元前3世紀にかけ、現在のトスカーナ州、ウンブリア州、ラツィオ州を中心とするイタリア中部で繁栄したが、最終的に古代ローマに敗れ、吸収された。金属加工や農業、美術を高度に発達させたエトルリアは、鉄器時代において最も洗練された文化を持つ社会の1つだったとされる。
研究者の間で長い間謎とされていたのが、エトルリア人の起源や独特の言語だ。その系統は不明だが、インド・ヨーロッパ語系ではないと見られ、当時この場所で、なぜ周囲の言語と同化しなかったのかは解明されていない。しかし最近、彼らがイタリアの先住民族であったことを示唆するDNA分析の結果が発表され、ヨーロッパの古代史に新たな光が当てられている。(翻訳:石井佳子)
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