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マンハッタン地区検事局が古代ローマの胸像を押収。モデルはローマ皇帝マルクス・アウレリウスの娘?

トルコからの略奪美術品に関する捜査が進む中、マンハッタン地区検事局は、《Portrait of a Lady(貴婦人の肖像)》として知られる古代ローマ時代の胸像をマサチューセッツ州のウースター美術館から押収した。

ローマ皇帝マルクス・アウレリウスの娘を描いたとみられる胸像。Photo: Courtesy of Worcester Art Museum

アメリカのNBCニュースによると、この胸像は、ローマ帝国の属州であったブボン(現トルコ南西部)から略奪された後、マンハッタンで密売された可能性が高いという。

西暦160年から180年頃につくられたとみられるこの胸像のモデルは、ローマ皇帝であったマルクス・アウレリウスの娘であると考えられているが、彼女の父親は、後のローマ皇帝セプティミウス・セウェルスとする説もある。本作は1966年にウースター美術館に収蔵されたが、同館関係者がNBCに語ったところによると、その出所については「限られた情報しかない」という。

ウースター美術館のマティアス・ワシェック館長は、「捜査の進展に感謝しています。当館の倫理基準は60年代当時から大きく変化しており、われわれは、現代の考え方に沿ったコレクション管理に今後も注力していきます」とコメントしている。

マンハッタン地区検事局は近年、略奪文化財の調査と元の国への返還を強化してきた。その成果として、今年2月には1992年にイタリアから密輸されニューヨークに渡ったローマ皇帝ハドリアヌスの胸像(西暦200年ごろ)を、同4月には、紀元前2世紀ごろにアラバスターで作られた女性像をイエメンに、その翌月にはメソポタミアの石灰岩製の象をイラクに返還している。さらに最近では、イギリスの美術商、ロビン・サイムズが密輸した2点の古美術品をリビアに返している。これらの価値を合計すると、126万ドル(約1億8500万円)にも上るという。(翻訳:編集部)

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