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  • 2024.04.12

古代ギリシャの略奪文化財か? クリスティーズが密売を疑われる古美術品の出品を取り下げ

クリスティーズが、古代ギリシャの遺物4点のオークション出品を取り下げた。2011年に略奪品の密売で有罪判決を受けた古美術商、ジャンフランコ・ベッキーナに関係する疑いが浮上したためだ。

略奪品の疑いがあるとしてクリスティーズがオークション出品を取り下げた4点の古美術品の1つ。Photo: Courtesy Christie's

4月9日付けの英ガーディアン紙によると、問題の遺物はマンフレッド・ツィンマーマン博士のコレクションから出品が予定されていたもの。同紙は、クリスティーズにはベッキーナに関係する品だとの認識があったはずだとするクリストス・ツィロギアニス博士の見解を報じている。

古美術品の略奪と密売ネットワークに詳しいツィロギアニス博士は、1979年にジュネーブで行われたクリスティーズのオークションで4点のうち3点が落札されたが、これらはベッキーナから販売を委託されたものだと指摘。根拠となったのは、略奪文化財の密売人捜査が専門で、2020年に死去したイタリアの検察官、パオロ・ジョルジョ・フェリから託された文書と画像だ。その中には、当時の売買に関する手紙とベッキーナが委託した作品を赤丸で囲ったオークションカタログが含まれていたという。

出品が取り下げられた古代ギリシャの遺物4点は、戦士が描かれたアッティカの杯(紀元前570年から紀元前560年頃、予想落札価格1万5000ドル〜2万ドル:約230万〜300万円)、スフィンクスが描かれた鉢の蓋(紀元前570年~紀元前550年頃、予想落札価格8000~1万2000ドル:約120万〜180万円)、ギリシャ神話の英雄テセウスを描いた油壺(紀元前500年から紀元前490年頃、予想落札価格:2万~3万ドル:約300万〜450万円)、そしてワインと豊穣の神ディオニュソスが描かれた水鉢だ。

これら4点のうち3点は、2005年から2018年までドイツのブレーメンにあるツィンマーマンの私設美術館、シュノア古代美術博物館(Antikenmuseum im Schnoor)で、その後2018年から2023年までハンブルクの美術工芸博物館で展示されていた。これについてツィロギアニス博士は、「オークションハウスも、コレクターやその家族も、そして美術館でさえも、展示品が不正な取引に関与していないかを当局に確認しようとしない」と批判している。

クリスティーズの広報担当者は、ARTnewsへの声明で次のように述べた。

「これらの文化財にジャンフランコ・ベッキーナが関係していることをクリスティーズが知っていたという指摘は正しくありません。そうした関係を証明する文書が存在する可能性があると知らされ、詳細な調査のために作品の販売を取りやめました。今後イタリア当局とともに調査を進める予定です」

さらに、クリスティーズでは古美術品の来歴に細心の注意を払っているとしてこう付け加えた。

「カタログはオークションのかなり前に公開し、一般の方にもご覧いただいています。当社では法的に販売可能なもののみを提供するよう厳格な手順を設け、調査にあたっては世界中の公的機関や組織と緊密に協力しています」

アートニュースペーパー紙が報じているように、略奪文化財売買で有罪判決を受けた人物からの押収品を記録した文書へのアクセスを可能にし、来歴調査をしやすくするよう求める声はかなり前からある。2015年に美術館長協会関係者は、美術館が八方塞がりのジレンマに陥りがちだとしてこう嘆いた。

「来歴に問題のある美術品を所有していると非難され、同時に、そうした美術品を扱ったディーラーに問題があるかどうかを確認する能力がないと非難されるのです」(翻訳:石井佳子)

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