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【ARTnews Awards 2024】が決定!「最優秀ギャラリー・グループ賞」はジェフリー・ダイチの「At the Edge of the Sun」

US版ARTnewsは、アメリカの芸術機関における優れた業績を称える初のアワード「ARTnews Awards」を発表した。審査員を務めたのは、第59回ヴェネチア・ビエンナーレのディレクターを務めたチェチリア・アレマーニ、ソロモン・R・グッゲンハイム美術館の副館長であるナオミ・ベックウィズなど、アメリカ在住の著名なキュレータ6人と、US版ARTnewsのシニアエディター2人。選考の対象は、2023年9月1日から2024年8月31日までの間に開催された展覧会で、5部門から各1名が選出された。そのうち、「最優秀ギャラリー・グループ賞」に選ばれたのは、ジェフリー・ダイチで開催された「At the Edge of the Sun」だ。

2020年のアメリカ国勢調査では、ロサンゼルス市の人口のほぼ半数がヒスパニックまたはラテン系であることがわかった。しかしこれまで、この街の一流と呼ばれるギャラリーがラテン系アーティストの作品を展示することはほとんどなく、ましてや正式に代理を務めることもあまりに稀だった。しかしそれはロサンゼルスに限ったことではなく、アメリカのアート市場全体に言えることだ。そんな中、ロサンゼルスを拠点とするジェフリー・ダイチは、そんな業界の傾向を変えようとしている。

同ギャラリーで行われたグループ展「At the Edge of the Sun」は、ロサンゼルスが拠点の12人のアーティストの作品を紹介するものだが、ここで重要なのは、本展が単なるラテン系アーティストの展覧会ではなく、従来とは異なるテーマにも切り込んだ点だ。参加アーティストの中には、ジェフリー・ダイチや同等のギャラリーでの展示経験がある作家もいたが、大半は初めてであり、その意味で「At the Edge of the Sun」は彼らにとって展覧会以上のもの、つまり、成功への足がかりでもあった。少なくとも、本展に参加したアルフォンソ・ゴンザレス・ジュニアは、これがきっかけとなりジェフリー・ダイチで個展を開催するに至っている。

この展示会を企画するにあたりギャラリーは、キュレーターやギャラリストにテーマに沿ったアーティストを選出させるという通常の方法ではなく、12人のアーティストたちに企画を託したという。そして彼らは、自分たちがよく行くロサンゼルスの場所、例えば、ダウンタウンにあるゲイナイトクラブ、ニュー・ハリスコ・バーなどへのオマージュを捧げる表現を開拓することで、この街のステレオタイプに抗おうと試みた。

この「アーティスト第一」のアプローチによって、本展では多くの媒体やテーマが表現され、単一の美学を定義しようとする試みへの抵抗となった。グアダルーペ・ロサレス、アルフォンソ・ゴンザレス・ジュニア、マリオ・アヤラなどのアーティストによる大規模なミクストメディア・インスタレーションと、ラファ・エスパルザ、ジェイミー・ムニョス、マイケル・アルバレス、オジー・フアレスによる絵画が並置され、カルラ・エカテリーナ・カンセコ、ダイアナ・イェセニア・アルバラード、ガブリエラ・ルイズ、マリア・メアといったアーティストの親密な彫刻作品もそこに混ざった。また、メタ的な表現として、シズ・サルダマンドは全参加アーティストの肖像画を展示した。サルダマンドの絵画は、過去数年にわたって描かれたもので、展覧会の準備中に感じたコミュニティ意識の視覚的な記録となった。

また、「最優秀ギャラリー・グループ賞」の佳作には、ドゥ・トゥオン・リン、リリー・ジュエ・シェン、セレナ・チャンによるキュレーション集団、ランチアワー・コレクティブ主催の「Means of Production」が選ばれた。

「Means of Production」は、ニューヨークのチェルシーやトライベッカにあるコマーシャルギャラリーではなく、クイーンズ区フラッシングの工場で開催された。この工場には、台湾からの移民であるジェームズ・チャンによって設立されたファッションブランド、Sheerly Touch-Yaと、ウルス・フィッシャーのスタジオで働いた経験を持つ彼の娘セレナが立ち上げた生産会社、Shisanwuの二つの企業が入居しており、展覧会も建物の歴史と密に関連していた。ランチアワー・コレクティブはこの風変わりな場所にニューヨークを拠点とする75人のアーティストを招聘し、積み上げられた靴下用の箱の周りに彼らの作品を展示するというユニークなキュレーション方法を採用した。多くのニューヨークのギャラリーが閉鎖に追い込まれている中、型破りなスペースと精神で若いアーティストの作品を紹介した「Means of Production」が、現代アートの実践と実験に関する会話を前進させる一助となったのは明らかだ。(翻訳:編集部)

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