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老夫婦から買い叩いたアフリカのマスクを6億円で売却。骨董品商を詐欺罪で起訴

フランスに住む老夫婦がたった150ユーロ(約2万3000円)で骨董品ディーラーに売ったアフリカのマスクが、実は非常に貴重なものだった。老夫婦はこのディーラーを詐欺の疑いで起訴した。

2022年3月26日、モンペリエのオークションハウスで売却された、ガボン共和国ファング族のマスク。Photo: Pascal Guyot / AFP Via Getty Images

マスクは、夫婦がガレージセールのために自宅を掃除しているときに発見され、2021年9月、地元の骨董品ディーラーに150ユーロ(2万3000円)で売却した。しかしその数ヵ月後、夫婦は新聞で、そのマスクがモンペリエのオークションハウスで420万ユーロ(約6億5600万円)で落札されたことを知った。リストによれば、ガボン共和国の部族が冠婚葬祭などの儀式に使う伝統的なマスクだった。そして非常に珍しい品で、世界中の博物館に所蔵されているものを合わせても十数点に満たないという。アフリカの植民地総督だった夫婦の夫の祖父が、フランスに持ち込んだものだったのだ。

 このニュースを最初に報じたル・モンド紙によると、夫婦はディーラーを相手取って訴訟を起こし、ニームの控訴裁判所に賠償金の支払いを求めている。

訴訟は継続中だが、夫婦は小さな勝利を手にした。控訴裁判所は6月28日、夫婦の主張には「原則的に十分な根拠があると思われる」と判断し、裁判が終結するまで競売の売却代金を凍結するよう命じている。夫婦の主張は、ディーラーがこの工芸品の真の価値に対する疑いを隠していたという信念に基づいている。ディーラーは買い取ったマスクを店頭には置かず、フランスのオークション・ハウス3社に見積もりを請求。アフリカ工芸品の専門家と連絡を取り、炭素14年代測定と質量分析を使ってマスクを分析させた。その検査の結果、マスクの年代は19世紀に作られたものと判明している。そして民族学者に調査を依頼し、ファング族内の男性秘密結社で司法を司るンギル族が使っていたものと明らかにしているのだ。

モンペリエのオークションハウスは、このマスクを30万ユーロから40万ユーロ(約4700万円~6200万円)の予想落札額で売りに出したが、2022年3月に3倍以上の値で落札された。

骨董品ディーラーは当初、夫妻に30万ユーロの賠償金を提示したが、アートネット・ニュースによると、夫妻の子どもたちの反対により、この申し出は拒否されたという。アレスの司法裁判所は、2022年5月に行われた売却代金の保護差し押さえを認めた。しかしその後下級審によって覆され、売却金はディーラーに返還されている。現在はニームの高等裁判所で再審理中だ。(翻訳:編集部)

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