アート・バーゼル・マイアミ・ビーチでデモ。親パレスチナ団体が自治体のイスラエル債権投資を問題視
12月7日、マイアミを拠点とする複数の親パレスチナ派団体が、巨大アートフェア、アート・バーゼル・マイアミ・ビーチの会場前で抗議活動を行った。抗議の理由は、マイアミ市とその周辺地域の自治体がイスラエルに多額の債権投資をしていることにある。
12月7日、マイアミ・ビーチ・コンベンション・センターは、アート・バーゼル・マイアミ・ビーチ2024の一般公開2日目を迎えていた。その会場前に複数の親パレスチナ派団体の連合が集まり、マイアミ市やマイアミ・デイド郡などがイスラエルへの大規模な投資から手を引くまで、フェアをボイコットするよう来場者に呼びかけた。
US版ARTnewsの取材に応じたアーティストでテクノロジストのクリスティーナ・リベラによると、抗議行動はマイアミ最大の観光資源の1つとされるアート・バーゼルを、ガザ戦争への懸念を増幅させる場として利用するものだという。また、マイアミ・ビーチ市が昨年、それまでの2倍の2000万ドル(直近の為替レートで約30億円、以下同)にまでイスラエル債券への投資を増額させたことを抗議団体が問題視していると答えた。
南フロリダの「パレスチナのための正義」支部や「平和のためのユダヤの声」(JVP)の支部など、7日のデモを組織した4団体はこの債権投資がガザ地区への攻撃に関わるものであると考え、投資に反対するために抗議行動を起こしたとしている。実際、マイアミ・デイド郡は2023年10月現在で7600万ドル(約114億円)を、パームビーチ郡は4月現在で7億ドル(約1050億円)以上をイスラエル債権に投資している。
JVPは現在、地域社会や自治体にイスラエル債券の売却を働きかける「Break the Bonds(債権を破棄せよ)」キャンペーンを行っている。アート・バーゼルでの抗議行動もその一環として組織されたもので、同団体のヘイリー・マーゴリスは、このデモがガザで大量の死者が出ている現状を変えようとしない空気に疑問を持つきっかけになってほしいと語った。
7日の抗議行動には約30人から50人が参加し、「Let Palestine Live(パレスチナでの殺戮をやめよ)」と書かれた幅15メートルもの横断幕が掲げられた。この横断幕は、コンベンションセンターの正面を覆い、街の上空からも見えるように意図されたもので、昨年のアート・バーゼル・マイアミ・ビーチで行われた同様の抗議活動でも使われている。リベラのデザインをもとに、マイアミを拠点とするデザイナー、クロマットの協力のもと13人のクィアアーティストによって制作された。
JVPのマーゴリスは、マイアミを拠点とする団体連合のメンバーが数週間かけて計画したデモの中心的な訴えは、「アート・バーゼルのような知名度の高いアートフェアで、ビジネスが通常通り行われるべきではない」という点だと主張。一方、フェアの主催者側は、デモ参加者を逮捕するつもりはなく、法律の専門家やオブザーバーを控えさせているのは混乱を避けるためだと強調した。
現場では、7日午後2時頃までに10人ほどの警官が配置され、デモ参加者がコンベンションセンターの特定の場所に集まるのを制限するために監視を行っていたとされる。午後3時には警察が逮捕の可能性をちらつかせたため、活動家たちはフェアのメインエントランスから通りを隔てた「言論の自由のために設けられたスペース」に移動した。
こうした警戒態勢が取られてはいるが、トラブルを避けることはできず、昨年の抗議デモでは2人の参加者が逮捕された。リベラによると、2人は道路を横断中に逮捕され、うち1人はヒジャブを着用していたため標的にされたという(US版ARTnewsでは事実関係の詳細を確認できなかった)。
今年の抗議行動ではまた、マイアミ市とマイアミ・デイド郡がイスラエル債権から手を引くまで、アート・バーゼル・マイアミ・ビーチをボイコットするよう呼びかける嘆願書も提出された。7日に発表されたこの文書はオンライン署名サイトのChange.orgで公開され、日本時間の9日午後2時時点で84人が署名している。
なお、アート・バーゼル・マイアミ・ビーチは今年が22回目の開催。2021年には、同フェアとそれに付随するマイアミ・アート・ウィークが年間4億から5億ドル(約600〜750億円)の経済効果を生み出したと推定されている。(翻訳:石井佳子)
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