バンクシーの壁画修復をめぐりアート界で議論が白熱。イタリア文化省は「作家の許可は必要なし」
イタリア文化省が、ヴェネチアにあるバンクシーの壁画《Migrant Child(移民の子ども)》(2019)を修復すると発表した。これに対して美術批評家たちの間では是か非かの議論が巻き起こっている。
イタリア文化省のヴィットリオ・スガルビ次官は声明の中で、修復の資金は「重要な銀行」から提供されると述べている。10月5日に予定されていたこの件に関する記者会見は、詳細が明らかにされないままキャンセルされた。US版ARTnewsは同省にコメントを求めたがまだ返事は無く、文化省はアートニュースペーパーに対し、修復は予定通り進められると話している。
救命胴衣を身に着け、発煙筒を掲げる子どもを描いた壁画《Migrant Child(移民の子ども)》は2019年5月、ヴェネチアの歴史的建造物が並ぶドルソドゥーロ地区の、リオ・ノーヴォ運河沿いの建物の壁に一夜にして現れた。イタリアに存在するバンクシー作品2点のうちの1点だ。
壁画は人気の観光スポットになっているが、多湿の環境にさらされてきたため、大きなダメージを受けている。この状況は、地元住民やイタリア美術界の間で、壁画が徐々に色あせていくのを見過ごすべきかどうかの論争を引き起こした。批評家たちは、ストリートアートの根本的な目的をめぐり意見が分かれている。
イタリアの法律では、制作されて70年に満たないパブリックアートに関しては、遺産保護を監督する国家機関の管轄下にはない。
スガルビは声明の中で、「現代美術は私の仕事の一部であり、それを保護するのが私たちの仕事。ですから私は、この修復に責任があるのです」と語り、「作家が存命であるかどうかは関係なく、また、この作品が違法に制作されたものであることを考えれば、作家からの修復許可を得る必要はないと考えています」と続けている。(翻訳:編集部)
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