今週末に見たいアートイベントTOP5: 両大戦間のパリ・モードを俯瞰する「マリー・ローランサンとモード」、新シリーズを東京初披露「マーク・ゴンザレス展」ほか
関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!
1. 諏訪敦 「眼窩裏の火事」(府中市美術館)
徹底なる観察者、諏訪敦の創作を一覧
写実絵画のトップランナーとして知られている諏訪敦。しかし彼の作品に注目すると、「実在する対象を、眼に映るとおりに写す」という写実のイメージから抜け出し、緻密なリサーチを重ねてモチーフと徹底的に向き合うことで、認識の質を問い直す試みを絶えず行っていることが分かる。
本展では、第2次大戦直後の満州で病没した祖母をテーマにしたプロジェクト《棄民》、コロナ禍に、デザイナー猿山修と、森岡書店店主の森岡督行でユニット「藝術探検隊(仮)」を結成し、静物画の探求に取り組んだシリーズ、舞踏家、大野一雄を1999 年から亡くなる2010年まで描き続けた一連の作品などを展示。「視ること、そして現すこと」を問い続け、絵画制作における認識の意味を拡張しようとする諏訪の創作を明らかにする。
諏訪敦 「眼窩裏の火事」
会期:2022年12月17日(土)~2023年2月26日(日)
会場:府中市美術館(東京都府中市浅間町1-3)
時間:10:00 ~ 17:00(入場は30分前まで)
2. 小瀬村真美 「Before the Beginning」(MA2 Gallery)
西欧絵画の中のフィクションに着目。観ることとは何かを問う
西洋と東洋の特徴的な「絵画」の構図をベースに素材を集めてセットを組み、長時間かけて映像や写真を撮影。それらを加工して「絵画」のような1枚の写真や映像作品にすることで、空間や時間の構造を横断して「表現されてきたものとは何か?」「観ることとは何か?」という問いを表現する小瀬村真美。
西洋の古典絵画で描かれる写実的な場面は、一見現実を描いているようだが、多くの場合、それは合成によって成立させており、「絵 画 は 巧 み に 創 作 さ れ た 演 劇 映 画 のワンシーンであり、舞台セットのようなものである」と小瀬村は語る。本展では、描きかけの絵画のように静物画の一部のモチーフを残して撮影した静物写真シリーズ「Before the Beginning」、絵 画 の 中 の 最 小 限 の場面を切り抜いた映像シリーズ「A Scene」などを展示。解体された部品のように、不完全かつ生々しさをもった絵画の一部が展開される。
小瀬村真美 「Before the Beginning」
会期:2月3日(土)~3月4日(土)
会場:MA2 Gallery(東京都渋谷区恵比寿3-3-8)
時間:13:00 ~ 18:00
3. ACT (Artists Contemporary TOKAS) Vol. 5「引き寄せられた気配」(トーキョーアーツアンドスペース本郷)
3人3様の感性が露わにする「不可視の存在」
新進・中堅アーティストの継続的な支援などを目的とする目的とするトーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)。これまでのTOKASプログラムに参加経験のあるアーティストから選抜するシリーズ企画の5回目は、海老原靖、鮫島ゆい、須藤美沙を迎える。
本展は、3名それぞれが見えないものの存在を捉え、さまざまなスケールでその実体とイメージするものの関係性を問いかける作品を展示。海老原は、映画を一時停止した瞬間を捉えた油彩作品の「NOISE」シリーズ、鮫島は、近年取り組む絵画シリーズ「呼び継ぎ」を中心に、古代遺跡や使われなくなった誰かの道具、伝承、オカルトなどを題材として、多角的に空間を構成、須藤は太陽観測衛星「ひので」が捉えたX線画像をはじめ、研究者へのインタビューや集積したデータをもとに、太陽や土星、天の川などをモチーフとしたインスタレーションを発表する。
ACT (Artists Contemporary TOKAS) Vol. 5「引き寄せられた気配」
会期:2月11日(土)~3月26日(日)
会場:トーキョーアーツアンドスペース本郷(東京都文京区本郷2-4-16)
時間:11:00 ~ 19:00
4. マリー・ローランサンとモード(Bunkamura ザ・ミュージアム)
1920年代パリに開花したアートとモードを一望
様々な才能がジャンルを超えて交錯し、類まれな文化を生み出した1920年代のパリ。中でも、女性たちの活躍は華々しいものがあり、特に、マリー・ローランサン(1883-1956)とココ・シャネル(1883-1971)は、第2次大戦後の自由な時代を生きる女性たちの代表ともいえる存在となった。
本展は、女性的な美しさを追求したローランサンと、男性服やスポーツウェアの素材を女性服に取り入れたシャネルという対極的な2人の活躍を軸にし、ポール・ポワレ、ジャン・コクトー、マン・レイなど、その時代を彩った人々との関係にもスポットを当てる。モダンとクラシックが絶妙に融合する両大戦間のパリの芸術界を、オランジュリー美術館やマリー・ローランサン美術館など国内外のコレクション約90点で俯瞰する。同館の長期休館前最後の展示となる。
マリー・ローランサンとモード
会期:2月14日(火)~4月9日(日)
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム(東京都渋谷区道玄坂2-24-1 Bunkamura B1F)
時間:10:00 ~ 18:00 (金・土曜は~21:00、入場は30分前まで)
5. マーク・ゴンザレス「SNOW PROBLEM」(BOOKMARC)
NYストリートアートのトップランナー、新シリーズを東京初公開
アメリカ・ロサンゼルス出身のマーク・ゴンザレスは、自身が手掛けるkrooked Skateboardingをはじめ、Supreme、adidas skateboardingなど数々のスケートボード・ブランドの顔として知られるプロ・スケートボーダーでもあり、ニューヨークのストリートアートにおける最重要人物として、1990年代以降注目を集めている。
本展では、昨年よりニューヨークや旅先のメイン州などで描き続けた、余分なものすべてをそぎ落とした新境地の作品群を東京で初披露する。ゴンザレスは作品について、「自分の持つシンプルな曲線を追求しました。リネンの自然素材のキャンバスに黒いペイントをのせて、できるだけシンプルに」と語る。
マーク・ゴンザレス「SNOW PROBLEM」
会期:2月17日(金)~2月26日(日)
会場:BOOKMARC(東京都渋谷区神宮前4-26-14)
時間:12:00 ~ 20:00