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環境活動家が名画をハンマーで殴打。100年前にも女性参政権運動家による抗議の標的に

11月6日、ロンドンナショナル・ギャラリーで、ディエゴ・ベラスケス作《鏡のヴィーナス(The Toilet of Venus )》(1647-1651)を「緊急救助用のハンマーと思われるもの」で攻撃した2人の活動家が逮捕された。同館がX(旧ツイッター)の投稿で発表した

ディエゴ・ベラスケス《鏡のヴィーナス》(1647-1651)122×175cm ナショナル・ギャラリー所蔵 Photo: De Agostini Via Getty Images

事件は現地時間の午前11時前に発生した。今回の抗議行動を企画した環境活動団体ジャスト・ストップ・オイルがXに投稿した動画には、黒い太字で「ジャスト・ストップ・オイル」と書かれた白いTシャツを着た2人が、ディエゴ・ベラスケス《鏡のヴィーナス》(1647-1651)の前に設置された低い監視ロープを乗り越え、絵の保護ガラスを何度も殴打する様子が映っている。

《鏡のヴィーナス》はその後、美術館の保存修復師が検査するため展示から外された。

この動画によると、2人はその後振り返って武器を捨て、ギャラリーにいる来場者に語りかけた。活動家の1人が「女性は投票によって選挙権を得たのではありません。今こそ、言葉ではなく行動を。今こそ石油を止める時です」と訴えると、2人目の活動家が、「政治は私たちを失望させています。1914年、政治は女性を失望させました。もし私たちが芸術を愛し、家族を愛するならば、石油を止めなければならないのです」と続けた。活動家たちが作品の前に座り、手をつなぐと、同グループが11月18日にロンドンで企画している行進の告知が表示された。

ローマ神話の女神ヴィーナスが裸で横たわり、息子のキューピッドが持つ鏡を見つめている様子が描かれたこの作品は、英語圏では《The Rokeby Venus(ロークビーのヴィーナス)》という名でも知られており、ナショナル・ギャラリーのコレクションの中でも最も貴重なもののひとつである。

実は、この絵が攻撃されたのはこれで2度目だ。活動家たちが言及しているように、最初の襲撃は1914年で、参政権運動家のメアリー・リチャードソンがナショナル・ギャラリーに入り、肉切り包丁でヴィーナスの体に7つの深い傷を残した。その後、作品は完全に修復された。(翻訳:編集部)

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