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今週末に見たいアートイベントTOP5: 大型インスタレーションで坂本龍一の創作を辿る、ポケモン×工芸展が東京開催!

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

坂本龍一 | 音を視る 時を聴く(東京都現代美術館)より、坂本龍一 with 高谷史郎《IS YOUR TIME》2017/2023年 「Ryuichi Sakamoto | SOUND AND TIME」展示風景、成都木木美術館(人民公園館)、2023年 画像提供:成都木木美術館

1. 「ポケモン×工芸展-美とわざの大発見-」(麻布台ヒルズ ギャラリー)

桑田卓郎《タイル(ピカチュウ)》《カップ(ピカチュウ)》《ボウル(ピカチュウ)》2024年 個人蔵 © 桑田卓郎
撮影|中戸川史明
吉田泰一郎《ミュウツー》 2024年 個人蔵 ©吉田泰一郎
撮影|中戸川史明
植葉香澄《蒼炎文ヒトモシ》2024年 個人蔵/
植葉香澄《蔦唐草文ジュペッタ》2024年 個人蔵 © 植葉香澄
撮影|中戸川史明

東京展だけの作品も! 工芸作家とポケモンの「化学反応」

工芸の多様な素材と超絶技法がポケモンと「化学反応」させたらどうなるか──人間国宝から若手作家まで20人のアーティストが本気でその問いに挑んだ。金沢の国立工芸館でスタートした本展は、ロサンゼルス、滋賀、静岡の巡回を経て東京へとやってきた。

東京展では、新たに吉田泰一郎による全長約2メートルの《ミュウツー》、植葉香澄による美しい文様を纏った《蔦唐草文ジュペッタ》を含む新作が加わる。さらに、桑田卓郎はピカチュウをモチーフにしたカップとボウルの数を倍増させ、タイル576枚を加えた圧倒的なスケールの展示を展開。新作4点を含めた約80点が展示される。

ポケモン×工芸展—美とわざの大発見—
会期:前期 11月1日(金)〜12月25日(水)、後期 12月26日(木)~2025年2月2日(日)
場所:麻布台ヒルズ ギャラリー(東京都港区虎ノ門5-8-1 麻布台ヒルズ ガーデンプラザA MBF)
時間:10:00〜19:00(金土祝前日は20:00まで、入場は30分前まで)
休館日:なし


2. 「Competitive Meditation」(PARCEL)

Xu Zhen Every challenge is an opportunity for salvation., 2024 Ink on paper, hanging scroll 83 x 69 cm (without scroll) 202 x 91 cm (with scroll)
Li Hanwei Impossible to Concentrate Just as Smoke, 2024, Polylactic acid, carbon fiber, cloth UV printing, stainless steel, plastic 65 x 112 cm
Lu Pingyuan Lingua Playful-Tea, 2021, Ink and acrylic on acid-free paper 78.7 x 109.2 cm

徐震と新技術に挑む2人の中国人作家の創作を紹介

中国を代表するアーティストの徐震(シュー・ジェン)が「芸術や文化における無限の可能性を追求する」という強い理念のもと、2014年に上海に設立したMadeIn Gallery。本展では、徐に加え、同ギャラリーに所属する陸平原(ルー・ピンユアン)、李漢威(リー・ハンウェイ)による作品を紹介する。

2012年からフィクションを軸に創作活動を続ける陸平原は、人工知能を新たなイデオロギーとして捉え、「神」としてAIに自らが書いた物語や伝統的な神話を投げかけて新たな神話の登場人物を生成させる「Best of the Best Draw」シリーズや、人間の言語を視覚化し、生命体のように表現する「Lingua Playful(言葉遊び)」シリーズを展示。テクノロジーを新たなメディアとし、それがどのように私たちの知覚、コミュニケーション、アイデンティティの構築に介入・支配するかを探る李漢威は、AIマッピング、指紋認証、CGレンダリング、3Dプリントなどの高度なアルゴリズムに依存する情報処理技術を駆使し、人間と機械の境界線がますます曖昧になる現象を探求する「Witness(目撃者)」シリーズの新作を披露。徐震は日本初公開作品を発表する。

「Competitive Meditation」
会期:11月23日(土)〜2025年1月12日(日)
場所:PARCEL(東京都中央区日本橋馬喰町 2-2-14 まるかビル2F )
時間:14:00〜19:00
休館日:月火祝


3. ジャンルカ・ガルトゥルッコ展/ ウェルカム・ホーム(ポコギャラリー東京)

《DOWN TO EARTH》
《DAYDREAMER》
《WAR AND PEACE》
《OIL ON PAPER》
《MISSION ACCOMPLISHED》

ロスの美術家が表現する現代の「ディストピア的な崩壊と回復⼒」

ロンドンに本社を構え、20年以上に渡って世界的各地のアーティストとともにブランドコンテンツを制作するクリエイティブ・エージェンシー「Pocko(ポコ)」。その東京オフィスとして設立された「Pocko Japan(ポコジャパン)」がこの度新スペース「Pocko Gallery Tokyo」をオープンした。同スペースでは、これまで日本で紹介されていなかったユニークな才能の展覧会を企画し、作品を展示・販売するという。

そのこけら落とし展は、ロサンゼルスを拠点とする写真家、ジャンルカ・ガルトゥルッコの個展だ。ガルトゥルッコは1990年代から現代美術作家として国際的に評価を受け、ミラノやバルセロナなど世界各地で展示を行ってきた。本展では、近年の紛争やAIの発展、気候変動などを踏まえて「ディストピア的な崩壊と回復⼒」をテーマに掲げた最新作《Welcome Home》を披露する。ハリウッドが持つ現実と虚構の幻想的な融合を描き出したという同作は、現代の混沌の中でも予期せぬ美しさとユーモアを提⽰し、不確かな世界の中であっても私たちを希望の瞬間に誘うだろう。

ジャンルカ・ガルトゥルッコ展/ ウェルカム・ホーム
会期:11月29日(金)〜2025年1月10日(金)
場所:ポコギャラリー東京(東京都港区⻄麻布 2-7-5 ハウス⻄麻布 5F)
時間:11:00〜19:00(金月は13:00~20:00)
休館日:火水木


4. 小西真奈 「Wherever」(府中市美術館)

《Untitled》 2023年 油彩、キャンバス
《Awesome Rocks》 2007年 油彩 キャンバス『府中市美術館』蔵。
《キンカザン2》 2005年 油彩 キャンバス 第一生命保険株式会社蔵。

独自の風景画世界を拓く小西真奈の画業を約100点で辿る

現代日本において風景画の可能性を拡張する画家、小西真奈の美術館では初となる大規模展。1968年東京に生まれた小西はアメリカ東海岸の美術大学で学んだ後、2006年に帰国。同年に若手作家の登竜門であるVOCA賞を受賞するなど、雄大な景観を大画面に収め、隈までしっかりと描きこんだ理知的な絵画はすぐに高い評価を得、小西の転換点である2010年、そしてコロナ禍を経てどこか懐かしさを感じさせる作品は穏やかに人々の記憶に語りかけてきた。

本展では、精選した2000年代の代表作に加え、近作と新作約100点を一堂に紹介する。近作と新作は主に自宅近くの風景を描いており、半分以上が初公開となる。感覚的に色が選ばれ、即興的でおおらかな作品は、絵を見る私たちの緊張を解くように軽やかさとやさしさであふれている。

小西真奈 「Wherever」
会期:12月14日(土)〜2025年2月24日(月休)
場所:府中市美術館(東京都府中市浅間町1-3 都立府中の森公園内)
時間:10:00〜17:00(入場は30分前まで)
休館日:月曜(祝日の場合は翌日)12月29日~1月3日


5. 坂本龍一 | 音を視る 時を聴く(東京都現代美術館)

坂本龍一 with 高谷史郎《IS YOUR TIME》2017/2023年 「Ryuichi Sakamoto | SOUND AND TIME」展示風景、成都木木美術館(人民公園館)、2023年 画像提供:成都木木美術館
坂本龍一+アピチャッポン・ウィーラセタクン 《async–first light》2017 年「Ryuichi Sakamoto | SOUND AND TIME」展示風景、成都木木美術館(人民公園館)、2023年 画像提供:成都木木美術館
中谷芙二子《ロンドンフォグ》霧パフォーマンス #03779、2017年「BMW Tate Live Exhibition: Ten Days Six Nights」展示風景、テート・モダン、 ロンドン、英国 コラボレーション:田中泯(ダンス)、高谷史郎(照明)、坂本龍一(音楽) 撮影:越田乃梨子

大型インスタレーション作品10点が一堂に。坂本龍一の創作を振り返る

音楽家・アーティスト、坂本龍一(1952-2023)の大型インスタレーション作品を包括的に紹介する、日本初となる最大規模の個展。坂本は50年以上に渡って多彩な表現活動を行い、常に時代の先端を切り拓いてきた。本展では、生前坂本が同館のために遺した展覧会構想を軸に、坂本の創作活動における長年の関心事であった音と時間をテーマに、6組のアーティストと協働した未発表の新作と、これまでの代表作で構成された没入型・体感型サウンド・インスタレーション作品10点あまりを、美術館屋内外の空間にダイナミックに構成・展開する。

ダムタイプの活動でも知られる高谷史郎との協働作品は5点。そのうち《IS YOUR TIME》(2017/2024)は、坂本が2011年の東日本大震災の津波で被災した宮城県農業高等学校のピアノに出会い、それを「自然によって調律されたピアノ」と捉え作品化した。タイの映画監督・アーティスト、アピチャッポン・ウィーラセタクンとは、《async–first light》(2017)を共に創り上げた。アピチャッポンが小型カメラを親しい人たちに渡して撮影してもらった映像に、坂本は「Disintegration」「Life, Life」の2曲をアレンジして提供した。そのほかのコラボアーティストは、真鍋大度、カールステン・ニコライ、Zakkubalan、岩井俊雄。また、スペシャル・コラボレーションとして、地下2階のサンクン・ガーデンでは中谷芙二子と高谷史郎、坂本による霧と光と音が一体となった新作《LIFE–WELL TOKYO》霧の彫刻 #47662(2024)が展示される。

坂本龍一 | 音を視る 時を聴く
会期:12月21日(土)〜2025年3月30日(日)
場所:東京都現代美術館(東京都江東区三好4-1-1)
時間:10:00〜18:00(入場は30分前まで)
休館日:月曜(祝日の場合は翌日)、12月28日~1月1日

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