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  • 2024.05.13

82歳と85歳の環境活動家が展示ケースを金づちなどで破損。「恐ろしい苦しみを和らげるため」

5月10日、ロンドンの大英図書館に展示されているマグナ・カルタ(大憲章)を保護するガラスケースの一部が、環境活動団体ジャスト・ストップ・オイルのメンバー2人による抗議行動で破損した。

マグナ・カルタを展示しているガラスケースを叩く環境活動団体ジャスト・ストップ・オイルのメンバー。Photo: Just Stop Oil/Via Twitter

大英図書館の警備員に拘束された2人は、博士号を持つスー・パーフィット師(82)とジュディ・ブルース(85)と名乗った。ジャスト・ストップ・オイルがX(旧ツイッター)に投稿した動画では、パーフィットがガラスケースに当てたノミをブルースが金づちで数回叩いている。

その後パーフィットは、「THE GOVERNMENT IS BREAKING THE LAW(政府は法律を破っている)」と書かれた横断幕を広げて抗議の意思を示した。大英図書館の声明では、マグナ・カルタに損傷はなかったとされている。

1215年に発布されたマグナ・カルタはイギリス憲政史における重要文書の1つで、君主を含むいかなる人間も法の支配の下に置かれることを定めた歴史的憲章。現存する原本は4部で、そのうち2部を大英図書館が、残りはソールズベリー大聖堂とリンカーン城が1部ずつ所蔵する。

ジャスト・ストップ・オイルは気候変動による環境破壊が進んでいることへの注意喚起を目的に、ヨーロッパ各地の有名な美術品や文化遺産を標的としたアートアタックを繰り広げている。

たとえば2022年10月、2人の活動家がデン・ハーグのマウリッツハイス美術館でヨハネス・フェルメールの《真珠の耳飾りの少女》に接着剤で頭を貼り付けるなどして抗議。翌年にはロンドンのナショナル・ギャラリーで、ディエゴ・ベラスケスの《鏡のヴィーナス》の保護ガラスが救助用のハンマーと見られるもので割られ、逮捕者が出た。どちらの絵画も損傷はなかったと報告されている。

こうした抗議行動は、美術界や美術館を訪れるアートファンの間で賛否両論を巻き起こしているが、同団体の活動が収まる気配はない。今回の一件では、Xに投稿された動画でパーフィットがこう主張している。

「クリスチャンとして、これから起こる、そしてすでに起きている恐ろしい苦しみを和らげるために、できる限りのことをしなければならない。(中略)我われは石油の使用を止めなければならない」(翻訳:石井佳子)

from ARTnews

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