ロバート・スミッソンのランドアート代表作《スパイラル・ジェッティ》が米国家歴史登録財に指定
ランドアートを語る上で欠くことのできないアーティストで理論家のロバート・スミッソンの代表作《スパイラル・ジェッティ》が、完成から50余年を経て、アメリカ合衆国国家歴史登録財に加えられた。
アーティストで理論家のロバート・スミッソンが、その代表作《スパイラル・ジェッティ》をアメリカ・ユタ州のグレートソルト湖に完成させてから54年。このほど、ランドアートの歴史に重要な足跡を残した本作が、正式にアメリカ合衆国国家歴史登録財(National Register of Historic Places)に指定された。このリストは、アメリカ合衆国内務省の下部組織である国立公園局(National Park Service)によって管理されており、国家的に重要な場所を認定するもの。《スパイラル・ジェッティ》がリストに加わることで、今後、作品の長期的な保存がより容易になる。
スミッソンが《スパイラル・ジェッティ》を制作したのは、亡くなる3年前の1970年。当時、彼はエントロピー(物理学において「分子・原子の運動の秩序の度合い」と定義され、日本語では「混沌」を意味する)の概念を作品の基礎としており、自然の要素と人工的な空間がどのように相互作用し、最終的に崩壊していくのかを探求した。
全長1500フィート(約457メートル)にも及ぶ《スパイラル・ジェッティ》には、6000トンの黒い玄武岩と現地で掘り起こした土が用いられている。それらの素材は幅15フィート(約4.5メートル)の曲線に並べられ、結晶化した塩を用いて要素を半永久的に結合している。制作された年のグレートソルト湖は水位が非常に低かったが、湖が元の水位に上昇する年には作品は完全に水没する。しかし最近では、水位の変化により作品は乾燥した状態が続いている。
ユタ美術館、グレートソルト湖研究所、ホルト/スミッソン財団、そしてユタ州の森林・消防・州土地局の支援を受けながら、1999年から《スパイラル・ジェッティ》を保存・管理するディア・アート財団のディレクター、ジェシカ・モーガンは、本作が国家歴史登録財に追加されたことを受け、次のように声明で述べている。
「《スパイラル・ジェッティ》が重要な認定を受けたことを大変嬉しく思います。この認定によって、この象徴的なアート作品に対する認知を広め、長期保存のための支援を促すことが可能になります」
また、ディア財団のキュレーターであるジョーダン・カーターは、次のように語る。
「この認定は、スミッソンが意図した通りに作品を保存すると同時に、その意味において不可欠な、周囲の自然環境の認識という私たちの取り組みを、さらに支持・支援するものだと受け止めています」
1966年に設立された国家歴史登録財には、現在、全米で9万5000以上のサイトがリストアップされており、その多くが記念碑や彫像。ランドアートとしては《スパイラル・ジェッティ》が初となる。
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